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第112話 架月side
「はぁ?何それ意味わかんないんだけど」
太陽から一緒に家に帰らねえか?って連絡がきた。意味がわからなすぎてついつい出た言葉。
「母さん達も心配してるだろ」
「帰るなら1人で帰りなよ」
「お前がいないと嫌だ」
「じゃあ太陽も帰れないね」
冷たくあしらってると「なあ、お願いだって」と太陽が珍しく俺にお願いをしてくる。だからうっ、と声を詰まらせた。
「お前がちゃんと家に帰って、高校行って、ちゃんと卒業したら、兄貴も絶対喜ぶぞ」
「···世間で当たり前になりつつある高校卒業をしてもそんなに喜ばないでしょ」
「いや、喜ぶ。それでお前はこれから何も考えずに自分のしたいようにして、兄貴と暮らせる」
「今の、すごいポイントだね。それは嬉しいけど···家に帰るのは嫌だよ」
今更帰って何言われるのかわからない。
怒られるのがオチだろうと思うと気が進まない。
「でも帰らねえと制服もねえし?学校いっても追い出されるだろ?」
「···まあ、そうね」
「な?だから帰ろう」
「ちっ···わかったよ、いつ?」
「明日!」
明日?なんでそんな急なの?
気持ちを整える準備期間を全然与えてくれない。
「······明日、迎えに来て」
「わかった」
約束をして電話を切る。
俺の様子を見てた兄貴が「帰んのか?」と声をかけてくる。
「うん。···ねえ、兄ちゃんは俺がちゃんと高校卒業したら嬉しい?」
「そりゃあな」
「卒業しても、ずっとここに住んでいい?」
「ああ」
「···じゃあ、頑張らないとなぁ」
明日、母さん達に会うことも、学校を休んだ分、周りよりももっともっと勉強することも。
「お前が頑張るなら、俺は応援してる」
「···ありがとう」
近くに来た兄貴が俺の頭を撫でる。
そのまま、強く抱きついて安心する匂いを胸いっぱいに貯めた。
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