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第113話

「来たぞ」 「来たね」 「行くぞ」 「行くよ」 兄貴に抱きついて離れない俺を引っ張る太陽。 顔を上げたら兄貴が困った顔で俺を見下ろしてて仕方ない、と1度キスをしてから離れた。 「帰ってきたら、ご褒美ちょうだい」 「考えとく」 考えとくっていいながら優しい兄貴は絶対俺にご褒美をくれるはずだ。ニヤニヤ笑ってると後ろから頭を叩かれて「痛いな」と言いながら振り返る。 「早く行くぞ」 「早く行って早く帰るからね」 「早くは帰れないだろ」 「···兄ちゃん!」 助けを求めて兄貴に手を伸ばすとヒラヒラと手のひらを振られて俺は引き摺られるように外に出た。 「いいか架月」 「何」 「まずは謝るんだ。勝手なことしてごめんなさい、だ」 「···そんな台詞考えてるの?その時出てきた言葉でいいんじゃないの?」 「ダメだよバカ。謝ってからこれからはどうしていくかをちゃんと言わねえと」 「···俺、別にバカじゃないんだけど。わかった、とりあえずちゃんと高校卒業して兄貴と暮らす、って言う」 そう言うと頭を撫でられてすかさずその手を振り払う。 「なんか、緊張すんな」 「自分の家に帰るのにねぇ」 「お前全然緊張してねえだろ」 「してるよ」 本当はうるさいくらい心臓が鳴ってる。 緊張して頭も痛いし、吐きそう。 「お前顔色悪いぞ」 「だって緊張してるもん」 足取りが重たい。

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