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第119話
昼休みになって購買でパンを買って教室で静かに食べる。太陽と凛ちゃんは話してるけど、あんまり興味なくて食べ終わった後、1人で教室を出て1人になれる場所ー、と裏庭の奥まで行ったところにひっそり置かれているベンチに腰をかけた。
「はぁ」
久しぶりの学校は疲れる。
日差しが当たっていて気持ちのいいこの場所。近くで野良猫があくびをしていた。
ここは裏にはの奥であるから遠いってあまり誰もこないのを知ってる。なのに、目の前に女の子が不安げに立っていて「あら?」と首を傾げた。
「あ、す、すみません!!」
手に持ってる弁当箱。
いつももしかしたらここで食べてるのかもしれない。ずっと学校に来てなかったからそんな事も知らなかった。
「えっと、ごめんね。どうぞ俺のことは気にしないで」
「え···」
俺を見てくる黒髪ロングの女の子。
上履きが赤色だから、1年生かな。
うちの学校は学年ごとに色が振り分けられる。
今なら3年は緑、2年が青で1年が赤。
3年が卒業すると次にやってくる1年生は緑色になる。
「1年生だよね」
「は、はい!」
恐る恐るといった感じに隣に腰をかけた女の子は俺の方を見てコクコクと首を縦に振った。
「ご飯、1人で食べてるの?」
「あ···」
「あ、ごめん、気にしてた?」
「い、いやいや大丈夫です!えっと、先輩は、2年生ですよね?」
「うん」
さっきあくびをしてた野良猫が横になって眠ってる。その姿を見てたら俺もちょっと眠くなってきちゃった。
「間違ってたらごめんなさい···、あの、先輩は羽島、さん?」
「そうだよ、何で知ってるの?」
「噂で聞いたことあります、今の2年生に双子で凄くかっこいい人がいて、金髪の方と銀髪の方、だと」
「俺はその銀髪の方ね、羽島架月だよ。」
ググって伸びをする。
そんな動作をしただけでビクッと震えた彼女はもしかしたら虐められてるのかも知れない。
いや、あからさまないじめじゃなくて仲間外れに近い状態なのかな。
「最近は学校に来てないって、聞いてました」
「うん、今日は久しぶりに来たよ。太陽···あー、俺の双子の兄貴ね、太陽も来てる」
「そうなんだ。私初めて羽島さんのこと見たから···」
「羽島さんじゃなくてさ、架月って呼んで、ややこしいから」
「すみません」
いや、謝ることじゃないと思うけど。
彼女の方に顔を向けるとお弁当を開けてパクパクと食べてる。そのお弁当の中身が何とも美味しそうで思わず近づいて中を覗き込んだ。
「これ、自分で作ってるの?」
「はい」
「すごいね、美味しそう···」
「よかったら、食べます?」
「え!いいの!?」
顔を上げると意外にも至近距離。
彼女は顔を赤くして俺からパッと離れた。
「ごめんごめん」
「い、いえ、私こそ···」
そのあと、少しの間変な沈黙が走って。
それから気づいた、俺、彼女の名前聞いてない。
「ねえ、名前なんていうの?」
「あ、に、西口新奈(ニシグチニイナ)です」
「新奈ちゃんね。じゃあ俺教室戻るから、またね」
「はい」
新奈ちゃんに手を振って、あともう少しで昼休みも終わるし、と教室に帰ることにした。
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