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第120話
「架月どこ行ってたの?」
教室に戻ると凛ちゃんが俺の机に何かを書きながらそう聞いてきた。ねえ?何書いてるのそれ。机を見てみると絵を描いてるようだ。え、何この変な生き物。
「何これ」
「架月」
「うそ、俺もっとイケメンでしょ?」
「だから凄くイケメンにしてるじゃん」
「··············」
そうだった、凛ちゃんは凄く絵が下手だった。
「俺に似顔絵描いてもらえた人は幸せになるよ」
「本当?俺幸せになれる?」
「なれるなれる。保証はしないけどね。消したらだめだよ」
「はいはい」
適当に返事をして席に座ると「で?どこに行ってたの?」と小首を傾げて聞いてくる凛ちゃん。
「裏庭のところ、ベンチあるでしょ」
「ああ、奥のところね。あんなところ行ってたの、遠いのに」
「何か変な子と会ったよ」
「変な子?」
「1年の西口新奈ちゃん」
「ああ、知ってるよその子。いじめられてるよね」
あ、やっぱりそうなんだ。
くだらない事するなぁ、といじめられてる理由を凛ちゃんから聞くとこれまたくだらない。
「地味で真面目だからだよ。無理矢理委員長にされたりしてるみたいだし、基本あの子が話しかけたら誰も話さなくなるか舌打ちか···可哀想にね」
「何でそんな事知ってんの?」
「だって俺、モテるんだもーん」
ケラケラ笑って携帯の連絡先を見せてくる凛ちゃん。その画面に映ってる名前を見たら谷口咲って書いてある。
「咲ちゃん、すっごい面倒な子なんだけどさぁ、初めに···新奈ちゃん、だっけぇ?その子をハブろうとした子。この咲ちゃんとも俺は繋がってるし、咲ちゃんの親友の香織ちゃんとも繋がってるのさ。咲ちゃんのことは香織ちゃんが、香織ちゃんのことは咲ちゃんから。俺が頼まなくても話してくるよ。その中で香織ちゃんから聞いた。新奈ちゃんのことも、何でそれが起こったのかも」
「うわー、凛ちゃんの位置ってすごい面倒だねぇ」
「いや、楽しいよ?2人とも自分はいい子アピールしてくるけど、親友に本性バラされてるの、爆笑モノでしょ!!」
ケラケラと笑う凛ちゃんに苦笑を零す。
あれ、そういえば太陽がいない。
「太陽は?」
「トイレだよ、その後どっか寄ってくるって言ってた。えっとな···ああ、照ちゃんところ」
「何で」
「さぁ?知らない」
携帯をいじって、それから何かを発見したのかまた俺に画面を見せてきた凛ちゃん。そこにはさっき俺が話してた新奈ちゃんの写真があって「この子でしょ?」と凛ちゃんが嫌な笑みを浮かべる。
「助けてあげるの?いいよいいよ、俺もさ、実はこっち側でしたー!って明かした時にあの2人がどんな顔するのか見たいから」
「いや、助けてって言われてないし、そんなに接点ないし」
「えー!優しい架月くんなら助けてあげると思ったぁ」
「優しいのは俺じゃなくて太陽くんですぅ」
まあ、そりゃあ助けてって言われたら助けてあげるつもりではいる。でも、何も言ってないのに助けたりしたら「余計な事しないで」って怒られる可能性もないわけじゃないし。
「でも危ないよ、あの子」
「え、何が」
「昨日、香織ちゃんの方と会ったんだけどね。咲ちゃんが新奈ちゃんを本格的に···とか何とか言ってたから」
「···女子って怖いね」
「ねぇ」
おどけてみせるけど、内心少し心配だ。
はぁ、と息をついたところでチャイムが鳴る。昼休みが終わってしまった。
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