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第121話
「あ!太陽!!」
「おー」
「どこ行ってたのー!」
「朧と電話」
太陽が帰ってきたのは授業が終わってからだった。
どこかポワポワしてるのは朧のせいらしい。俺だって兄貴と電話したい!!
「ねえ太陽!」
「ん?」
「楽しいことしなくない?」
「したい」
何?と言う太陽に新奈ちゃんのことを説明すると俺が何をしたいのかわかったらしくてニヤニヤ笑って肩を組んできた。
「まあ、新奈ちゃんにはちょーっと悪い気もするけどなぁ」
「でも楽しそうでしょ?凛ちゃんも一緒にやりたいーって」
2人で笑いながら1年の教室がある階に行く。
遠目から俺たちを見てくる1年達、派手な男子と女子は俺たちを見て目をギラつかせている。そんな中、1人ポツン、と教室の隅の席で座ってる新奈ちゃんを発見した。なら、この近くに咲ちゃんと香織ちゃんがいるよね。と辺りを見回すと俺たちを見てキャーキャーとはしゃいでる2人組の女子が居る。
「···あいつらっぽくね?」
「ぽいね」
コソコソ話す太陽に返事をして、ニヤニヤとついつい緩んでしまう頬をそのままにその子達に近づいた。
「ねえ、名前は?」
「あ、あたし、谷口咲です!」
「あたしは早野香織です」
ニコニコ笑う2人。俺たちの真意も知らないで簡単に靡いてくれる。
「話あるんだけどさ、ちょっと来てよ」
「もちろんです!」
「あの羽島さんですよね!太陽くんと、架月くん」
気安く名前を呼ぶな、何てことは思わないけどやっぱりちょっと不快ではある。
それを笑顔で隠して頷くと目をキラキラとさせて俺の腕に香織ちゃんの方が腕を絡ませてきた。
「あたし架月さん、すごいタイプ!髪綺麗!」
「ありがとねぇ」
隣をちらりと見たら太陽は咲ちゃんに言い寄られてる。さすがというべきか笑顔で相手して「じゃあ行くか」とそのままとある場所に向かう。その時にバチッと新奈ちゃんと目があって、少し悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。
「···ねえ、あの子」
「ああ、あの子はすごい地味で真面目で···秘密だけど、咲がいじめてるの」
「ふぅん」
何も聞かなくても話をしてくれるお喋りな香織ちゃんは俺の腕を掴んで体を寄せてきた。これから何があるのかも知らないで。
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