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第123話
案の定と言うか、新奈ちゃんの教室に行くと新奈ちゃんに八つ当たりをしてる咲ちゃんがいた。
俺の存在に気づかないで新奈ちゃんに罵声を浴びせてるから、こっそり新奈ちゃんの隣に立って彼女の肩に触れる。
「咲ちゃん、それ位にしとかないと怒るよ」
「か、づきくん」
「香織ちゃんももういじめなんてしようと思わないだろうし。咲ちゃんも、この子をいじめてた子も、2度とこんなことしないでよ」
笑いかけるとスーッと怒りは無くなってきたのか咲ちゃんは椅子に座って黙ってしまった。そんな咲ちゃんを横目で見て、新奈ちゃんの腕を掴んで教室から外に連れ出す。
「か、架月くん!」
「ん?」
「どこ行くの!?」
「あのベンチのところ」
連れて行くと手を遠慮がちに離される。
「わたし、よかったのに···」
「そう?でもね、このままだったらもっと酷いこと起こってたよ」
ベンチに座ってボーッとする。すると立ったままの新奈ちゃんが「······何で?」と聞いてきた。
「何が、何で?」
「何で、会ったばかりの私のこと、助けてくれたんですか?」
「別に理由はないけど、何もしてないのにいじめられるとか馬鹿馬鹿しくない?そもそもイジメがくだらない」
あくびを零してそう言うと微笑んで俺の隣に座る。
「架月くんは、強いですね」
「強くなんてないんだけど、そう見えた?」
「はい。だって周りの人は私がいじめられてても無視します、関わったら自分も同じ目に遭うかもって怖いんでしょう、私もその立場ならそう思うと思います。だから別に責めるつもりはありません」
「だから、我慢しようって思ってた?」
「だって···私が我慢したらきっと他の人はいじめられないんでしょうから」
「新奈ちゃんの方が強いじゃんか」
自分を犠牲にして、人を守るなんてきっと俺にはできないと思う。
「でも、そんな私を助けてくださった架月さんは、私よりずっと強くて優しいですよ」
「······ありがとう」
柔らかく綺麗に笑う彼女はそこら辺にいそうな子だ。
なのに今、すごく綺麗に見えた。それはきっとこの子が強い子だからだと思う。
「ねえ、明日からすぐはきっと、クラスの子達とご飯食べるのなんて気まずいでしょ?」
「ああ、まあ···はい」
「俺と食べようよ。俺と、太陽と···あ、凛ちゃんってわかる?」
「凛ちゃん?」
「えっとねぇ、俺と同じクラスでね···すごく優しそうに見えて実はとてつもなく腹黒い···」
「あ、なんとなくわかりました」
わかるんだ!?と驚いたけどクスクス笑う彼女に俺もつられるように笑った。
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