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第139話

学校が終わり兄貴が校門まで黒塗りの車で迎えに来る。そんな厳つい車で迎えに来るなよ、周りの奴らがジロジロと見てる。 「あれ、燈人がいる、なんで?」 「おう架月それに、太陽」 車に乗り込むと一度見たことのある男が俺を見てニヤリと笑う。それに嫌悪感を丸出しにしてると「まあまあとりあえず組行くぞ」と兄貴に「出せ」と命令した。 「燈人がいると思わなかった。兄貴ぃ、ただいま」 「おかえり」 「チューしたいー、信号赤になれ!」 「······お前な」 「赤なった!キスして!」 振り返った兄貴が仕方ないとでも言うように架月にキスをしてる。燈人···さんを見るとどうでもいいって感じで兄貴たちを見ていて俺は少し焦りながら落ち着いて静かに座っていた。 「お前は静かなんだな。架月は俺を見てすげえ罵声浴びせてきたぞ」 「···罵声浴びせたからってどうにかなるわけじゃないでしょ」 「まあそうだけど、思ってること全部吐き出したら結構スッキリするもんだぞ」 その言葉を無視して兄貴と話をしてる架月をぼーっと眺める。だんだん眠たくなってきて目を閉じてると「着いたよー」と架月に起こされて車を降りた。 「兄貴」 「何だ」 燈人さんと一緒に架月がどんどん中に入っていく。 兄貴に「俺は何で呼ばれたの」と聞けば首を左右に振って「何も教えられてねえんだ」と言われた。 「すげえ帰りたい」 「悪いけどそれは無理だな。···架月について行け」 「やだよ。兄貴と一緒にいる」 「俺も仕事がある」 断られて仕方なく架月の後を追う。 廊下を歩いて角を曲がったところで2人の姿が見えなくなって「あれ?」と首を傾げた。 どこだ?無駄に広いんだよここ。とイラつきながらウロウロしてるとトントン肩を叩かれる。 「あんた、誰」 「···燈人さんどこ?」 「いや、あんた誰」 「···羽島太陽」 「羽島···、羽島の弟?」 「うん」 眠たそうな顔をしてて、その人は何かを考えた後「こっち」と俺の腕を引いてどんどん歩いていく。 すると1つの部屋についてトントンノックをして「佐助です」って言ったそいつは中から返事があるとドアを開けて俺の背中をグッと押して中に入れた。 「おお。ありがとな、佐助」 「いえ···失礼しました」 すぐにドアを閉めてしまった佐助さん。お礼言えてない。後でちゃんと言わないと、と中に入って燈人さんを見た後、すごく寛いでる架月に近づいた。 「架月」 「ん、何?」 「お前、仮にもここ、人の家」 「でも燈人がいいって言ったから」 ゴロゴロしてる架月をじーっと見てから燈人さんの方を見ると「お前も自由にしてくれていいぞ」と落ち着いた声音でいってきた。 「何で、俺まで呼んだんですか」 「仲良くしてえなぁって思って」 「···はぁ?馬鹿だろあんた」 「さすが双子だな、架月も初めに俺に言ってきたぞ、それ」 「そんなのどうでもいい。普通あんたの恋人と寝たやつと仲良くしたいなんて思わねえだろ」 「それも言われたな、架月に。···それに関しては改めて言われると腹が立つから黙っとけ。そもそもお前らがそうしたのは俺がしっかりしてなかったからだ。だから俺がお前らを怒る権利は無い。もうそのことはもう忘れろ」 自分の中で勝手に何が悪くて何が正しいって決めてる燈人さんは煙草を吸って「な?」と言葉を投げてくる。 「あんたが、ちゃんとしてたら俺はこうなってなかったってこと?」 「そうだな」 「なら、あんたと仲良くなんて絶対したくない」 「まあそうだろうな」 何が楽しいのかくくっと笑う燈人さんに腹が立って唇を噛んだ。早く帰りたい、今日は全部忘れられるように朧にひどく抱いてもらいたい。そんなことを考えてると「とりあえず」といつの間にか近くに来ていた燈人さんにすっと目の前に名刺を差し出された。 「俺はお前と仲良くしたいと思ってる。何かあったら連絡しろ、助けてやるから」 「······あんたにメリットがないのに何でこんなこと」 「俺は損得で動いてるわけじゃねえ」 髪をガシガシ撫でられた、それは嫌だと感じなくて抵抗することなく受け入れる。 「な?いつでも連絡しろ」 「···う、ん」 「ここにもいつでもきていい。あ、でも来るときは連絡しろよ、ここにいないかもしれないから」 「···えっと、ありがとうございます」 「別に敬語なんていらねえよ」 小さく笑う燈人さんは、すごく優しい人だったって、今やっと、知れた。なぜだか泣きそうになる俺を架月がそばに寄ってきて抱きしめてくる。 「太陽いじめたら許さないからね」 「いじめねえよ」 2人が笑ってるのを見て、俺も自然と口元が緩んだ。

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