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第153話
「やだ、やっぱり行かない」
時間になっても何もしないでソファーに座ってる俺に兄貴が溜息を吐く。
「何でだよ。何か嫌なことがあんのか?」
「···嫌なことっていうか、離れたくない」
「···仕方ねえな。今日だけだぞ。」
そう言われて顔を上げたけど、兄貴は仕事に行くんだった···と、そう思ってまた顔を下げた。
「兄ちゃんは仕事でしょうが」
「······ついてくるか?」
「怒られないの、そんな勝手なことして。燈人は若頭でしょ?燈人が仮に良いって言ったとしてさ、1番上の偉い人はいいって言ってくれないかもよ」
「なら親父に聞いてみる」
「そんなことしなくていいよ。」
俺の前で立ってる兄貴の腰に抱きついて腹に顔を埋める。
「···じゃあ、今日は休めるか聞いてみる」
「仕事なのにそんなことしていいの?」
「お前が我慢できるならそんなことしねえけど、···前のことがあるから···」
「···俺別に死にたいとか、死んでもいいやーとか、そんなこと思ってないよ?」
真守の事、俺はちゃんと解決してるから。
そんな心配はいらないよ?と笑ってみせると「それでも、俺が不安」って頭に手を置かれる。
「最近、わかんねえんだけどさ···お前が近くにいねえと不安になる」
「···それって俺のことすごい好きって言ってるのと一緒じゃない?」
「ああ、そうだ、お前のことすげえ好きだ」
「一緒だね。俺も兄ちゃんから離れたくないよ」
ただの好きじゃない。お互いに少し依存してるこの感じ。それが温くてその温度が変わることはない。きっとずっと浸かってられるのはそのおかげ。
「やっぱり···今日は休んで」
「ああ」
隣に座った兄貴にキスをして、軽くもたれる。
特に最近は温かった、俺の思う普通の生活を過ごしていたからか楽しいと思えたのは新奈ちゃんのいじめが終わった日のこと以外何も思いつかない。
「なんか···刺激がほしいなぁ」
「喧嘩はすんなよ」
「他に何したら刺激貰えるの!」
「···ならあれだ。お前、錦のこと覚えてるか?」
錦?···ああ、兄貴と同じ桜樹組の幹部の。
コクコク頷くと「あいつ、喧嘩上手いし、鍛えてもらえばどうだ」と言われてすぐにまた頷いた。
「やってくれんの!?そんなこと!」
「まあ、あいつお前のこと気に入ってるみたいだし···。あ、でも変なことされそうになったら言いにこい、あいつは1度決めたら何でもやり通すから。気をつけろ」
「す、スリル満点だねぇ」
前に錦と会った時のことを思い出して、ちょっと嫌な感じが背中を走った。
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