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第158話
「これは?」
「···おい架月、悪いがちょっと出ててくんねえか」
そう言われたから部屋の外に出て少し待ってることに。床に座ってポーッと庭を眺める。暖かい日差しがちょうど当たっていて心地いい。
少しして組長さんが出てきて「悪かったな、もういいぞ」と笑いかけてくれる。それに返事をして立ち上がり中に入ると兄貴以外の2人が難しい顔をしてジーッとパソコンを睨んでいた。
「兄ちゃん」
「ん?」
兄ちゃんの隣に行って抱きつこうとするとやんわり「ダメだ」と拒否される。そりゃあそうか、ここではあまりそんなことしない方がいい。燈人の前ならよかったんだけどなぁ。
「燈人、いるかな」
「今日はきてるはずだけど···」
「行ってくる」
「···連絡してから行けよ」
「はーい」
燈人の携帯番号を連絡帳から探して電話をかけた。
3回目のコール音が聞こえたのと同時、プツリと音がして「どうした」と低い声が聞こえる。
「今から行くね」
「ああ」
「うん」
全く驚きも何もない様子からどうやら燈人は俺が来ていることを知っていたようだ。簡単に電話を終えて部屋から出て確かこっちだったよなぁって燈人の部屋に勘を頼って行ってみた。
「お、ついた」
やっぱり俺って頑張ればなんでもできちゃうんだな。うんうんと頷いて「入るよー」と中に向かって声をかける。「おー」と返事が返ってきたから遠慮なく中に入ると煙草を吸ってる燈人がいた。
「今日は学校じゃねえのか?」
「休んだ」
「ふーん。まあダブんねえように気をつけろよ」
「うん」
ふかふかのソファーに腰を下ろしてダラリとする。別に何の用があった訳でもないからそうしてボーッとしてると「なあ」と声をかけられた。
「何」
「お前気をつけろよ」
「何が?」
何の話をしてるのか全くわからない。気をつけろって言われたって何から?別に最近は喧嘩だってしてない、大人しくしてるはずなんだけど。
「いや···」
「何?気持ち悪いな」
「お前に話すかどうか、すげえ迷ってる」
「話すならさっさと話してよ」
燈人をじーっと見るとクスリ、と苦笑を零してでもすぐに真剣な顔になって睨むように俺を見る。
「きっと、近いうちに抗争が起きる。そんな大きいもんじゃねえけど、危ないのは確かだ」
「···兄貴が危ないの?」
「それもそうだけどな、お前がここに来ているところを敵に見られたりでもしたら、お前が危ない」
「···じゃあもう明日からこないよ」
「そうじゃなくても、桜樹組幹部である羽島海の弟だってバレたら狙われる可能性はゼロじゃねえ」
そんなこと言われても、それは俺がなりたくて羽島海の弟になったわけじゃない。けど、そういう奴らに俺たちの話なんて通用しないということは知ってる。
「お前も、太陽も用心しとけ」
「うん」
なんだか頭が痛いや。
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