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第161話
「いらっしゃーい」
勢いよく玄関のドアを開けた架月のせいで額をぶつけた。蹌踉めく俺を朧が笑いながらも支えてくれる。
「ゆっくり開けろ」
「はいはい、ごめんねぇ」
大して悪びれるわけでもなく、早く中に入れと急かしてくる架月につられて中に入って靴を脱いだ。「お邪魔します」と朧が後ろで言ったのが聞こえる。
廊下を歩いてリビングに行くと兄貴が飯の準備をしてて「悪い、もうちょっとかかる」と俺と朧を見て言った。
「あ、あの、お邪魔します···すみません、これ」
「ああ、そんなのよかったのに···すみません気を使わせてしまって」
持ってきた手土産を朧が兄貴に渡す。
2人ともいつもの感じはどうしたんだってくらい違和感満載の態度でお互いに探り探りでなんとか話をしていた。
「た、い、よーう」
「うわっ」
後ろから飛びついてきた架月が落ちないように背中側に腕を回して架月を支えながら俺も自分が倒れないように足で踏ん張る。
「あ、っぶねえ···」
「ねえ太陽、俺の話聞いて」
「はいはい、聞くから降りろ」
「やーだー」
さすがに同じくらいの体重の弟をおんぶするのは重たい。ソファーに座ろうとすると襟首を引かれて「ぐぇっ」と変な声が出た。
「ぶはっ!!ちょ、聞いた!?今の声!カエルみたい!!」
「お前···」
「架月やめろ」
兄貴が注意すると架月は大人しく俺から降りて兄貴の隣に行き、ご飯の用意をしだした。いやいや、俺の言うこともちゃんと聞けって。
「大丈夫か?」
「あ、うん」
朧が隣に来て俺の頭をポンポンと撫でてくる。その手に甘えてると「ご飯できたよ!」って架月が大きな声が聞こえた。
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