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第171話 太陽side

「架月!架月!?」 架月が「もう大丈夫」と言ったきり意識を飛ばしてしまった。よくよく様子を見るとまた傷は増えてるし、首には強く絞められたのか手形をした痣が残っていた。 「···ごめん、架月」 眠る架月の髪を撫でてそう呟く。 どこからかうるさい音がたくさん聞こえてきて、もう大丈夫ってみんなが迎えに来てくれたってことか?と眉を寄せた。 敵の拠点に乗り込むってことは抗争が始まったってことだよな。そしたら···朧は?怪我するかもしれないし、死んじまうかもしれない? 「いやだ···」 裏切られたくせに、朧には怪我もしてほしくない。って思ってる。こんなの、桜樹組のみんなにとって···架月にとって、すごく最低なことなのに。 「どうしたら、いい···」 手が震えてきた。いざって時に全然使えねえ俺が、架月の兄貴なんて。どうしようもない罪悪感と劣等感が膨れ上がる。 とにかく俺たちがここから早く出ることと···朧を守ること。 「鍵開けないと···」 俺たちが入れられてるそこの鍵、誰が持ってんのかは知らねえけど取り敢えず近くにぶら下がってたりしねえかなぁと格子に手をついて外を見る。 「あれ?」 そしたら格子の1部分、ドアになっているところがキィーッと音を立てて開く。 さっき架月を連れてきたあいつ、鍵閉めるの忘れてんじゃねえか。 「架月!架月!」 「···ん、」 架月の体を軽く揺らして起こす。 痛むようで顔を歪めながら「とにかくここから出よう」っていう俺の話を聞いた架月はフラフラと立ち上がってドアになってる部分から外に出る。 これで桜樹組の人と合流して架月を預けたら、朧を助けに行ける。早く早く···そう思ってると「ねえ」と架月の落ち着いた声がすぐそこで聞こえた。 「何?」 「太陽は、朧のこと、助けてあげたいんだよね?」 「は?」 俺の思ってたことはとっくにバレてたみたいで架月は小さく笑いながら「なら、助けてあげないとね···。俺たちを裏切ったこと、多分本心じゃないと思うから」と言葉を続けた。

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