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第173話 架月side
とりあえず高崎組の敷地から出ようと外への出口を目指す。歩くたびに身体中が痛くてフラフラする。
「っ、よいしょ、」
「架月、背中乗れ」
「いい、いらない」
さっきまで泣いていたくせにもうそんな素振りも見せないで兄貴の顔をしてる。
「もう無理ってなる前に言えよ」
「うん」
こっちかなぁってとりあえず歩くと知ってる顔を見つけた。
「錦だ」
「錦?」
「桜樹組の幹部···あいつのとこ、行こう」
「ああ」
太陽の腕を引っ張って錦のところに行く。錦も俺たちに気付いたみたいで走って俺たちのところに来て俺の腕を掴んだ。
「双子を保護した」
耳につけてるイヤホンマイクで仲間にそう連絡をした錦は俺たちの頭を撫でて「すまなかった」と一言言う。
「兎に角架月は病院な、あー···それより先に羽島のところ···いや、あいつじゃなくて若か」
「錦、お願いがあるんだけど」
「あ?」
こんな時にこんなこと言うの、酷いってわかってるけど言わないときっと守れない。
「朧には何もしないで」
「朧な、わかった。俺から連絡しておく」
「ごめん、ありがとう」
これで朧はきっともう大丈夫だ。
俺の言葉に眼を見開いた太陽に笑いかける。
「大丈夫だよ、もう」
「···あ、ああ」
じゃあ若のところ、行くか。と錦に掴まれていた腕を引かれる。引かれるまま歩くと後ろから「みーっけ」と嫌な声が聞こえた気がした。振り返るとあのチャラ男がいてその手には銃が握られている。
錦はまだ気付いてない、危ないから逃げようと足を動かそうとするけどそういう時に限って体が痛くて倒れそうになった。
そんな時、俺の背中側に太陽が立ってニコッと笑う。それと同時に乾いた銃声が鳴り、太陽が膝から崩れていく。
「太陽ッ!」
「お前らあいつを抑えろ!!」
錦の声が聞こえるよりも早く、太陽に近寄る。
名前を呼んでも反応がなくてとめどなく溢れる血に頭が真っ白になった。
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