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第175話

病院について手術中と書いてある部分が赤く光っていた。ジーッとそこを見てると兄貴が隣に来て俺の肩を叩いた。 「架月、手、洗え」 「あ···」 手に付いたままだった血を見て心臓がうるさく音を立てた。血が乾いてパリパリと手から剥がれる。 「こっちこい」 兄貴に腕を引かれて座っていた椅子から立たされる。 トイレに手を洗いに行って、そのときに鏡に映る自分の顔を見て、酷いなと思わず笑いが漏れた。 「架月」 「ん、何?」 「首、すげえ痣になってる」 そうだね、と笑うと首元に兄貴の手が触れて息が止まった。首を絞められた時の光景と苦しさを思い出す。 「やっぱり、トラウマになってるか」 「···っ、大丈夫だよ」 けれどそんなの、太陽に比べたらどうってことない。 「巻き込んで悪かった」 「···やめてよ、別に何とも思ってないから」 兄ちゃんにそう言われて緊張が解けたのか身体中が悲鳴をあげて立っているのもキツくなった。 「おい!」 「······ごめん、痛くて···」 「手当てしてもらうぞ、こっちこい」 兄ちゃんの背中におぶられて何処かに連れて行かれる。 眼を閉じでボーッとしているといつの間にか眠ってしまっていた。 *** 「···ん」 「起きたか」 眼を開けると燈人がいて俺を見てからすぐ視線を逸らした。 「お前、身体中痣だらけだったぞ。···ついでに言えば肋骨にヒビが入ってた」 「へぇ···。それより、太陽は?」 「あいつなら大丈夫だ。今は眠ってるけどな」 「最後の最後に太陽に守られちゃったなぁ。俺、何とかして太陽を助けようと思ったんだけど」 「それで、その傷か」 納得したように数回頷いた燈人は俺の頭に手を伸ばしてクシャクシャと撫でる。 「悪かった。···それと、よく頑張ったな」 「···あのさ、別に悪いことしてないのにそんなこと言わないでよ。頑張ったのはまあ、認めるけど」 だって今身体ボロボロだもん。 「俺は組のことでやらなきゃいけねえことがあるからそろそろ帰る。ああ、そうだ。あの朧ってやつ、うちで預かってるがどうするつもりだ」 「本心であそこにいたわけじゃないと思うんだ。だから、太陽がちゃんと話をすると思う」 「わかった、ならどうするかは太陽に任せることにする。···ゆっくり休め」 うん、と返事をして燈人が部屋からいなくなるのを目で追って確認する。1人になってから深く息を吐いて痛む身体を無理矢理起こした。

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