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第177話

少しして車椅子を持ってきたさっきの看護師さん。 そこに座って押されながら太陽のところに行くとそこにはもう兄ちゃんがいた。 「兄ちゃん」 「架月···お前、寝てないでいいのか」 「大丈夫。太陽は?寝ちゃったの?」 「ああ、寝てる」 パイプ椅子に腰掛けて太陽の頭を撫でる兄ちゃん。その隣に車椅子で座って、看護師さんは帰って行った。 「ねえ兄ちゃん」 「ん?」 何か、話そうと思ったんだけど口から言葉が落ちなくてそのまま黙った。沈黙が続いて兄貴が太陽を見ながら「何だよ」とぶっきらぼうに言葉を落とす。 「何でもない···」 「何でもなくはねえだろ。」 やっと俺の方を見た兄貴は驚いて息を飲む。 何故か目から涙が零れる俺はそんな兄貴をボヤけた視界で見るしかなかった。 「何で泣いてんだ」 「わかんない···何でかなぁ」 「どこか痛いのか?怖いことでもあったか?···いや、質問がおかしいな。そんなこと、当たり前なのに」 体は痛むし、首を絞め続けられたのは恐怖以外の何物でもなかった。 「架月?」 「···ごめん、何でもないのに勝手に涙出てきちゃった」 手で涙を拭う。 兄貴が俺の頭を撫でて、だから俺はそのまま兄貴にもたれ掛かった。 「眠いなら部屋帰るか?」 「···でも、太陽が起きた時1人だと寂しいと思うから」 「俺がここにいるから、お前は寝てろ。」 車椅子を押されて太陽の病室を出る。 自分の部屋に戻されてベッドに寝転ぶと突然だるさが襲ってきて体から力を抜き目を閉じる。 「おやすみ」 「···おやすみ」 兄貴が俺の頭を撫でて、その感覚を最後に意識を飛ばした。

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