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第178話
痛い、痛い痛い。
パッと目を開けると兄貴がすぐそばで椅子に座って眠っていた。
銃で撃たれたところが痛い、麻酔を打ってくれてたのかジワジワとくる痛みに暑くもないのに汗をかく。
「あ、兄貴···」
思った以上の掠れた声が出て驚いた。それでも兄貴には届いたみたいで目を開けて俺を覗き込んだ。
「起きたのか···どうした?」
「痛い···痛くて···」
そう言うとナースコールのボタンを押して看護師を呼ぶ。駆けつけた人に「痛い」と伝えると麻酔を打たれて少しすると痛みは無くなった。
「太陽、起きて早々悪いんだけどよ」
「何···?」
「お前が退院したら···あいつと···朧と話してこれからどうするか決めろ。若がどうするかはお前に任せるってよ」
「俺は、これからも朧といるつもりだよ···高崎組も終わったんだろ?ならもう朧はどこにも入ってないってこと、足洗って表の世界に戻ってくるよ」
そう言って笑うと兄貴は「お前は小さい頃から変わんねえな」って俺の頭を撫でる。
「兄貴、架月は···?」
「今は眠ってる」
「···架月、俺のせいで酷い目にあったんだ。多分朧が俺には手を出すなって言ってくれてたんだと思う、俺は何もされなかったけど、架月は意識がなくなるまで···えっと···」
「何だ」
「···お、犯されたり、殴られたり、してたから」
今でもあの時のことを思うと架月には申し訳ない気持ちしか出てこない。兄貴は俺の話を聞いて眉を寄せて「同意じゃねえよな?」と聞いてくるから頷いてみせる。
「その時は朧が裏切ったって聞かされて俺も狼狽してたんだ···急に何もかもが怖くなって泣いてたら架月が2人の男に話があるからって連れてかれて···帰ってきた時は体を動かすのもしんどかったみたい」
「それぐらいヤられて殴られたってわけか。そいつらの顔、覚えてるか?」
「俺を、撃ったやつと···あと、強面の人」
「お前を撃ったやつはうちにいる。あと何人か拘束して地下にぶっこんだ」
兄貴が怒りに染まってるの、久しぶりに見た。
キレたときは口が悪くなって、冷静で···いつもと目が全く違う。
「架月は多分、俺にそれを言わねえだろうな。もしかしたら地下に入ってるやつに何人かいるかもしんねぇ···それもここを出たら教えろ」
「うん」
「···悪い、ちょっと落ち着く」
「ううん、いいよ。でも、ごめん麻酔効いてきたみたい」
だんだん眠たくなってきて瞼が重い。
手を取られて「おやすみ」と優しい声が聞こえてきて夢の世界に落ちた。
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