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第179話
「太陽」
そう言って笑う朧が居た。
何度か明るい朧が俺を呼んでいたのに、突然、暗い表情をした朧が俺の名前を悲しそうに呼んだ。
「朧、どうしたの」
呼びかけても笑うだけ。それも、ひどく悲しそうに。
そして俺の名前を呼んでいた朧は小さくなって涙を流す。その姿が怒られた子供が泣いているように見えた。
「朧」
「···ごめん、ごめんなさい···」
「朧、泣かないで」
泣いてる朧に触れると消える。
俺の顔を見て優しく穏やかに笑うあの姿はもうない。
ジリジリと嫌な汗をかく。
まるで朧が俺の前からいなくなっちまうみたいじゃないか。
「··········殺さないで···」
聞き慣れた大好きな人の悲痛な声が聞こえて静かに消えていった。
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