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第180話
スズメの鳴き声に起こされるように目を開ける。
太陽が窓から光をさしていた。
「羽島さん、おはようございます。よく眠れましたか?」
「···あ、はい」
看護師さんが飯を持ってきてくれて座るのはまだ傷口が痛むからと軽く上半身の部分だけベッドを上げる。飯を食べようと箸を手に取ると「あ」と看護師さんが短く声を上げた。
「弟さんが貴方と一緒にご飯を食べたいって言ってたの、忘れてたわ」
「あ、そうですか。ほっといていいですよ」
「···でも、多分、外で待ってるあの人、弟さんですよね?」
「······架月」
ドアの隙間からチラチラとこっちを見てる架月。
手招きをすると嬉しそうに自分の飯を持ってきてパイプ椅子に座った。
「おはよう」
「おはよう!あのね、俺だってもう退院するからさ、病院で一緒にご飯食べるなんてなかなかないでしょ?だからさ!記念に!」
「···何の記念だよ」
ケラケラ笑うと傷が痛くてグッと唇を噛んだ。
「退院っていつだよ」
「今日中にはしたいかなぁ。だって俺は怪我してないし」
「してるだろ」
「こんなの怪我って言わないよ。」
笑いながら箸を持って飯を食べだした架月は全く何でもなかったかのように楽しそうにしてる。いつの間にか居なくなった看護師さんを確認してから話を持ち出す。
「架月、兄貴となんか話したか?」
「いや?俺も眠たかったし」
「ちゃんと話しろよ。···何があったのか離さねえと、お前だって···」
「え?何もなかったよ?」
忘れようとしてるのか、本当に忘れたのか。
きっと前者だろうけどそうだとしても俺に架月を責めることなんてできない。
「···辛くなったら、話せよ」
「うん」
ふふっと笑った架月が少し心配になりながらも飯を口に入れた。
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