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第181話 架月side

俺は太陽と一緒に朝ご飯を食べた日、退院することになった。 そもそも、そんなに大きな怪我してなかったわけだから入院なんてしてなくても良かったんだけど。 兄貴が病院に迎えに来て、太陽に手を振って家に帰った。 2週間は絶対安静らしいから家で大人しくするつもりだけど、さすがに学校に行かなきゃまずいよなぁってため息を吐く。 「架月、俺に話すことねえか」 「話すこと?え、何?」 「···いやいい」 あれ、この感じもしかして太陽が兄貴に変なこと言ったんじゃないだろうね···。車に乗り込み病院を睨むけどその答えが返ってくるわけじゃないから窓枠に額をつけた。 「太陽に、何か聞いたの?」 「···ああ」 「何を、聞いたの」 強く握った拳、爪が皮膚に食い込んで痛い。今回のことで知られたくないことはあった。 知られたくないというか、俺自身が忘れたいだけなのかもしれない。 「お前が酷い目にあったってな」 「···そう」 きっと兄貴は知ってるんだ。 でもあえて酷い目って言ったのは俺が言いたくないって、聞きたくないってわかったから? 「どうせ全部聞いてるんでしょ、何で言わないの」 「お前が言われたくなさそうだから」 口をムグっと閉じた俺をチラリと見た兄貴は「辛かったな」とそれだけ言った。兄貴にそんなこと言われると胸がきゅっと苦しくなる。 「お、俺」 「ああ」 「いっぱい、セックス、した···。でも、それは···っ」 「知ってる。太陽を守るためだろ」 「でも結局は守れなかった」 最後に崩れていった太陽が頭から離れてくれない。今は元気だけど、それでもやっぱりそういうショックな光景は記憶に刻み込まれてる。 「架月」 「何···?」 「震えてる」 いつの間にか赤信号で車は止まっていて、俺の手を兄貴の大きい温かい手が包む。 「早く帰ってお前のこと安心させてやんねえとなぁ」 「ずっと抱きしめててくれんの?兄ちゃんの匂いって昔から落ち着くし、安心できる。」 「何だそれ」 笑う兄貴は俺の手を包んだまま運転を再開した。 早く家に着いて兄貴と二人の時間がまた始まると思うと幸せで泣きそうになった。

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