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第189話

「朧」 「···ああ」 「俺、朧のこと怒ってないよ。それに、恨んでもない」 「···············」 「責めるつもりだってないし。だから、帰ってきて」 「······そんなの、無理だ。わかってんだろ?俺はお前に怖い思いさせて、それに、架月にだって···」 朧が俯いてそう言うから、すぐ側によってその体を抱きしめる。 「帰ってきてよ。俺達への償いだと思って。」 「················」 「そうしたら、もう二度と忘れないし二度と同じ事はしないだろ」 「···で、も」 「でも、とかそんなのやめよう。もう、いいから。」 「なあ、太陽」 「何?」 何かを決意したかのような目で俺を見つめる朧。 「俺ね、お前のこと嫌い」 「············」 「お前といると自分がしてる事が全部間違いじゃないのかって思ったり、今生きていることも馬鹿らしく思えるんだよ」 「···············」 「これがいい機会だ。俺はもうこの先、生きたいとは思わない。このまま殺されてもいいと思ってる。だから、もう俺のことは忘れろ。」 悲しいことしか言わない朧に、何故か泣けてくる。 生きたいと思わない。殺されてもいい。そんなの朧に言って欲しくない。 「そんな事、言わないで」 「こう言う事でお前が俺を嫌いになるなら、何度でも言ってやる。」 そういう声が震えているのに、誰が本心だと思うんだろう。 「嘘つくの、下手だね。本当」 「何言って···」 「本心じゃないくせに。わかってるよ。」 「···そういうところ、大嫌いだ」 「それも嘘だよ。だって···泣いてるじゃん」 視線をそらした朧は口角を上げてみせる。 「帰ろう?」 そう言うと一度頷いた朧に、そっとキスをした。

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