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第190話

兄貴を呼んで朧の拘束を解いてもらった。 途端、緊張が解けたのか疲れが溜まっていたのか、ふらついて地面に倒れそうになる。 その体を兄貴が咄嗟に支えた。 「大丈夫か」 「···あ、すみません」 「いや···。とりあえず休んだ方がいいな」 兄貴が朧を支え、立たせる。 一度朧を連れて家に帰ることになって、四人で車に乗り込んだ。 「燈人には言わなくていいの?」 「いい。若には全部任されてる」 「そうなんだね。あー、なんか疲れたぁ」 運転する兄貴の隣、助手席でダラリとする架月と、俺の隣でドアにもたれかかって目を閉じる朧。 「トラさんのところ、連れていかなくて大丈夫なのかな」 「そうだな···」 兄貴がミラーで朧の様子をチラリと見る。 「連れていくか。その様子じゃ今晩にでも体調崩しそうだしな」 「じゃあ俺、トラさんに連絡してみるね」 「頼む」 架月がトラさんに電話をかけてくれる。 「朧、しんどくない?」 「···大丈夫」 薄く目を開けた朧が俺に向かって力なく微笑むから、胸が苦しい。 「俺にもたれていいし、なんなら寝転んでもいいから」 「いや、大丈夫」 何故だか泣きそうになるのを堪えて、トラさんのところにつくまで、それ以降はずっと口を開くことは無かった。

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