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4話
あたたかい。
朝は寒くて中々起きられないはずなのに、今日は妙にあたたかい。
ベッドの中で、何かが足に触れる。
なんだろう……硬くて、重い。
「……ん?」
奏汰はぼんやりと目を開けた。
視界の端に、見慣れた顔。隣には盛大に寝ている大きな男がいた。
「う、う、うわあああああっ!!」
「……びっくりしたぁ。なんだよ、寝ぼけたのか? 朝から全力で叫ぶなよ……」
「ま、まままま待って!? なんで先生がここにっ!!」
司は、まだ寝癖の残る頭をかきながら、あくび混じりに言った。
「え? なんでって……ここで寝たからだろ」
「寝た!? い、一緒に寝てたってことですか!?」
「そうだよ。覚えてんだろ? 俺が手伝ってやったこと。そしたらお前、すぐに『すぴー』って寝息立てて寝ちゃうからさ〜」
司は、どこか楽しそうに続ける。
「俺ひとり取り残されて、ちょっと寂しかったんだぞ?」
盛大にニヤニヤしている。その顔を見て、昨日のことが一気に蘇った。
「……いや、は? だから!?」
「まぁいいじゃん。お互いちゃんと寝れたし」
ふわっと笑う、その距離が近い。
近すぎる。
「……司先生、足、重い!」
絡められた足に今さら気づいた。
「おっと、悪い悪い。つーか奏汰、寝相悪いな? 夜中、蹴っ飛ばされたぞ」
「うそっ!」
「だから抱きしめて固定したんだよ」
「……な、何その対処法っ!」
思わず司を見つめてしまう。
そんなに寝相が悪いのかと気づいて、奏汰は少しだけ慌てた。
その様子がおかしかったのか、司は腹を抱えて笑い出す。
「あははは、ごめんごめん。いや、実は寒くてさ〜、つい、ついな。あはは」
ふざけているのか、本気なのか。
気づけばナチュラルに抱きしめられたまま、足まで絡められている。
距離感が完全にバグっている。
さすがに耐えられなくて、奏汰は思いきり蹴っ飛ばそうとするも、避けられてカナ振りだった。
「ははは、朝からかわいいなぁ、奏汰」
「かわいくないです!」
「そういうところが、かわいいって言ってんだよ」
余裕たっぷりの笑み。ベッドの中でジタバタする奏汰を、司はまるで仔犬でも眺めるように見下ろしている。
「どうした? スッキリしたか? 朝からもう一発やっとく?」
「や、や、やりませんっ!!」
奏汰は真っ赤になって叫び、今度こそドンと突き飛ばしてやった。だが司は全く懲りずに、声を上げて笑う。
「はははっ、元気だなぁ〜。朝から最高だよ、お前」
司のその笑い声が、悔しいくらい気持ちよく響いて、奏汰は布団を頭からかぶって現実逃避した。
◇
「やっべぇ……講師研修って今日からだろ?遅刻しそう。今日は朝メシ抜きな。ほら、さっさと支度しろ」
「……うっ……はい……」
一度やったことは、経験になり、実績になる。そうなると二度目は、やたらと簡単になる……どこかで読んだ言葉だ。
まさか、自分がそれを実感する日が来るとは思わなかった。
結局、あのあと朝からまた司とベッドの中でしてしまった。二人分のペニスを司が掴み扱かれるっていう羞恥の二人オナニーである。
『ほら、一度やったじゃん』みたいな、そんなノリだ。司は、口笛を吹くように軽く、恥ずかしがる様子もなかった。
嘘だろ、と思う。
自分はこんなこと、簡単にできる人間じゃないはずなのに。司に流されたというより、自分自身の方が信じられない。
……でも。
身体は妙に軽くて、頭もクリア。
目覚めのいい朝って、こういうことを言うんだろうか。
「あんなに出してよ、結構溜まってんだなお前。それとも……絶倫なのか?」
「……司先生、デリカシーない」
「その言葉も、最近聞き飽きたな〜」
司は飄々と笑いながらシャツの袖をまくる。その仕草が、また腹立たしいほど自然だった。
……まあ、ほんと。
この人に何を言っても通じるわけがないとわかってきている。奏汰は、半ば諦めたようにそう思った。
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