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第2話

高校入学を機に、何かスポーツを始めてみようと思ったのだ。 身長170センチ、細身の体に少しでも筋肉と体力をつけたかったからだ。 野球、サッカー、ラグビー……。 どちらもチームプレーが主軸となる競技は苦手であった。 自分のミスで誰かに迷惑を掛けてしまうのではないかと思うと、どうしても一歩を踏み出せなかったのだ。 消去法の末に残ったのが、テニスと卓球だったが、もちろん、これらを甘く見ていた訳ではない。 瞬発力と集中力を要する難しいスポーツであることは十分に承知していた。 それでも、最終的にテニスを選んだのは、青空の下で、身体を動かす開放感に惹かれたからである。 このテニス部では、各学年ごとに、リーダー、副リーダーが決められていた。 2年のリーダーである国島亮介は、将来を嘱望される選手として注目を集めており、雄弁で行動力にも優れていて、まさに、リーダーに相応しい資質を兼ね備えていた。 副リーダーの児山佳孝は、実力こそ十分にあるものの、人前に出ることを好まず、常に寡黙で、亮介を支える立場に徹していた。 その姿勢は、部員達の間で深い信頼と支持を得ており、まさにナンバー2としての地位を揺るぎないものにしていた。 亮介が「動」ならば、佳孝は「静」。 対照的な二人が、絶妙な「阿吽の呼吸」でチームを支えていた。 和也は、この二人の実力や存在感は認めてはいたが、憧れや、尊敬といった感情を抱いたことはなく、羨ましく思うこともなかった。 人は、それぞれ違うものであり、自分とは、別の種類の人間なのだと、どこかで冷静に割り切っていたのだ。 和也は、元々運動は得意という方ではなかった。 テニスも高校から始めたばかりの初心者である。 部員の中には、中学から、あるいはそれ以前から本格的にテニスに打ち込み、上を目指している者も多い。 和也が「ただの頭数」と見なされたとしても、本人は全く気にしないし、苦にも思っていない。 テニスに夢を見ることも、上達して何者かになろうという気持ちもなく、ただの手段にすぎなかった。 彼の目的は、学校生活の中でトレーニングを重ね、少しでも体力を付けることであり、それ以上でも、それ以下でもない。

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