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第7話

二時間目の国語の授業が始まって、しばらく経った頃、教室は静かで黒板には教師が書き込んだ漢字の成り立ちがずらりと並んでいる。 和也は、ノートにゆっくりと筆を走らせながら小さなあくびを噛み殺した。 昨日は少し夜更かしをしてしまったのだ。 「ねえ、夏休み、どうするか決めた?」 隣の席に座る宮内圭太が声を潜めて聞いてきた。 彼は明るくて、クラスのムードメーカー的な存在だ。 「う〜ん。まだ特に……部活もあるし」 和也は、消しゴムを転がしながら答えた。 「そうかあ、俺は家族で旅行に行くんだよね、沖縄!」 「いいなあ、海とかめっちゃ綺麗そう」 圭太の言葉に少し羨ましさを覚えながらも、和也の頭の中には、真夏のテニスコートが浮かんだ。 陽射しに照らされるコート。 乾いたボールの音。 そしてーーいつも厳しい表情でラケットを振るう、亮介と佳孝の姿が……。 「和也は?部活ばっかり?」 圭太の問い掛けに、和也は笑って頷いた。 「うん。合宿もあるし……」 「うわー、大変そう。でもさ、青春って感じじゃん?」 「そう……なのかな」 和也の返事に、圭太は満足げに頷いた。 チャイムが鳴り、授業が終わると同時に、クラスはざわつき始めた。 和也もノートを閉じ、伸びをしながら窓の外を見た。 明るい日差しが校庭の緑を眩しく輝かせている。 その時、祥太郎が軽快な足取りでやってきた。 「おう、和也、ちょっと。」 二人は教室を出て廊下を歩きながら、夏休みの話題になった。 「お前、部活忙しいんだろ。合宿もあるし、俺もあるんだよ。だけど二人で空いている日あったらどっか行こうぜ」 「僕と?どこに?」 「いや、それはまだ決まってないけど、考えておくよ」 「うん、別にいいけど」 「よし、決まりだな。じゃあ予定空いてる日あったら連絡しろよ」 祥太郎は、そう言うと軽く手を振って、それぞれお互いの部活へと向かった。 祥太郎といる時の和也は、いつも自然体でいられる。 サッカー部で明るく、少し大ざっぱだけど人の気持ちに敏感な祥太郎は、いつも和也にさりげなく声を掛けてくれる。 その優しさが嬉しかった。 が、時に怖いと感じることもあった。 なぜなら、和也には……、祥太郎にも言えない秘密があるからだ。 たとえどれだけ優しくても、どれだけ「大丈夫」と言われても。 沈黙という距離感だけは守らなくてはならない。 それは、和也の中にある、ささやかな防衛線だった。 (夏休みか……) 青い空を見上げ、これから始まる季節の中で、自分は何を見つけるのだろう……。 和也は、そんなことを思っていた。

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