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第10話

ラリー練習が始まると、力量に応じてペアが組まされた。 亮介や佳孝のような上級者達は、互いの球筋を読み合う緊迫したラリーを繰り広げていた。 そんな中、和也は二年生の中でも技術的に近い部員、奥村健吾と組まされた。 健吾はもともと陸上部に所属していたが、昨年の秋に「もっと身体を大きくしたい」という理由でテニス部へ転部してきた。 短距離選手らしい俊敏さとスタミナはあるものの、ラケットワークは和也と同じくまだ発展途上だ。 「よろしくな、三ッ橋。俺、走るのは得意だけど球技は苦手なんだよ」 と、健吾は照れたように笑った。 その飾らない物腰に、和也は少し肩の力が抜けた。 「うん、こっちもそんなに上手じゃないけど、頑張ろうな」 二人は軽くボールを打ち合ってみた。 健吾のフットワークは見事で、打点の入る速さは身体を見張るものがあったが、スイングはまだ粗く、回転のかかったボールには対応しづらそうだった。 和也は、そんな健吾の動きに、自分の不器用さとは別の(伸びしろ)を感じ、妙に励まされる気持ちになった。 「俺、動くのは任せてくれ。その代わり、三ッ橋は落ち着いて返してくれたら助かる」 「わかった。じゃあ、できるだけつなぐようにする」 同じ初心者寄りの二年生として組まされた二人だったが、どこかしら性格の波長は合っていて、互いの不足を埋め合うように自然と役割ができていった。 「ナイスショット、三ッ橋!」 「い、いや、今のはたまたま……」 互いに苦笑いを浮かべながらも、ラリーは続いた。 健吾の打ったボールが短くなったのを見て、和也は反射的に前へ踏み込み、浅いボレーを決めた時には軽いガッツポーズまで出た。 久しぶりに自分の意思でポイントを取ったことに、小さな達成感が胸の奥に灯った。 練習の終盤、全体を見回していた亮介と佳孝がやってきた。 佳孝は相変わらず、無言のまま立っている。 彼の視線に気づいた和也は、一瞬だけ目が合ったが、すぐに逸らした。 「さっきのボレー、良かったじゃないか」 亮介の声に、和也は思わず肩をすくめる。 「えっ……」 (見てたんだ。こんなに大勢いる中で、あんな小さなプレーを!) 「……あれは、狙って前に出たのか?」 和也は驚きながらも、小さく頷く。 「え、えっと……はい。短いって思ったので……」 亮介は二ヤリと笑って、僅かに顎を引いた。 「……悪くない判断だった…俺のパートナーに欲しくなっちまうかもしれないよ。お前、意外と光るとこあるじゃん」 「そ、そんなの……、冗談にしても……」 健吾がタオルを肩に掛けながら「お、俺、もう先に行ってるな!」と声を上げた…。 亮介と和也の空気を察したのか、気を利かせたのか、その表情は、どこか気まずそうで、すぐに駆け足でコートの外へ走って行った。 和也は、顔を赤くして、手に持ったタオルで汗を拭うふりをして下を向いてしまう。 「おいおい、照れんなって、冗談だよ」 亮介は、明るく笑い飛ばした。

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