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第11話

午後の練習は陽が傾き始めた頃、ようやく終了となった。 汗まみれのTシャツを脱ぎ、グラウンドの端に腰を下ろすと、全身に心地良い疲労が満ちていく。 まだ日差しは残っていたが山の気温は徐々に下がり始めていた。 「じゃあ、そろそろ風呂へ行くかー!」 という誰かの声に、どっと歓声が上がる。 笑い声とざわめきが広がる中、和也は静かに立ち上がった。 (温泉か……) その瞬間、緊張に固まった肩をほぐすように深呼吸をし、 (落ち着け……) と自分に言い聞かせる。 皆から少し遅れて浴場へ向かった。 脱衣所で、そっとタオルで身体を隠し、人気のない隅を選んで湯船に向かう。 ざわめきと、笑い声が飛び交い、湯気に包まれて湿った空気が充満している。 「温泉は、やっぱ最高だな~!」 「今日も一日、終わったな~!」 「気持ちいい~!」 はしゃぐ声が、次々と聞こえてくる。 和也は、すばやく洗い終えると、湯船に身体を沈めたのも束の間、誰よりも早く風呂場を後にした。 まるで追われるように急いで服を着る。 無事に終えたというよりも、どこか後ろめたさを引きずるような、後味の悪さを感じた。 二日目も、何とか無事に乗り越え、これで二泊三日の合宿も終わり、明日は帰れると安堵し、和也は深く息を吐いて布団に潜り込んだ。                翌朝、薄い陽光が差し込む中、目を覚ました。 だが、いつもと何かが違う。 身体に何も纏っていないことに気がついた。 つまり裸で寝ていた。 「えっ…、どうして……!?」 布団の傍には、昨夜着ていたはずの服が散らばっている。 自分で脱いだ覚えはない。 「まさか、誰かが……?」 一瞬、背筋に冷たいものが走った。 周囲を見渡してみたものの、皆は自分のことの準備で忙しそうにしている。 誰一人として此方を気にかけている様子はない。 (何があったんだ……?) 動揺を隠しつつ、和也はそっと散らばった服を拾い集め、誰にも気づかれないように素早く着替えた。 部屋を出るとき、僅かに乱れた呼吸を抑えるように、手が拳になっていた。 朝食を終えた後、荷物をまとめ、バスへと乗り込む時間がやってきた。 「おーい、忘れ物ないか?」 亮介の大きな声が響き、部員達は笑い声をあげながら乗車していく。 和也もその流れに乗り、そして窓際へと腰を下ろした。 エンジンが掛かりバスが揺れ始めると、窓の外に広がる合宿所の景色が次第に小さくなっていく。 「…終わったな……!」 呟いた言葉は、誰にも届かず窓ガラスに吸い込まれた。 今朝の裸での目覚め。 未解決のまま、記憶の底に沈んでいく。 だが、胸の奥には、何か確かに引っ掛かるものが残っていた。 バスは揺れながら街へと進み、和也はその不安定な気持ちを抱えたまま、目を閉じた。

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