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第12話
合宿が終わり、再び日常の学校生活に戻った。
部活の練習もいつものリズムを取り戻し、和也もその一員として汗を流していた。
だが、今日は様子が違った。
部室の前でうずくまり、ミネラルウォーターのボトルを握りしめながら、小さな溜め息を幾度も漏らしている。
その姿を目にしていたのは、リーダーの亮介、副リーダーの佳孝、そして、悠斗、拓海、渉と、いずれもテニス部の中でも目立つ存在の精鋭達だった。
なぜ彼らが揃いも揃って此処に集まっているのか。
和也は不思議に思った。
「どうしたんだ、具合でも悪いのか?」
声を掛けたのは亮介だった。
彼の声には、普段の雄弁さとは違う、どこか探るような響きが混じっている。
「何か悩み事でもあるのなら、力になってやってもいいぞ」
和也は一瞬、顔を上げて彼らを見た。
だが、その視線はすぐに足元へと戻る。
五人の視線が一斉に自分に注がれる圧力に耐えきれず、無意識にペットボトルを握る手に力が入った。
(どうして、こんな大勢で……、しかも亮介のあの言い方、何か裏があるんじゃ……)
和也の胸に不安がじわじわと広がっていく。
亮介の目には、僅かに黒い光が宿っていた。
言い返したい気持ちはあったが、言葉が喉元で詰まり、どうしても声にならない。
和也は、亮介と佳孝に小さく頭を下げ、足早にその場を立ち去ろうとした。
しかし、すぐに二人に行く手を阻まれる……。
「えっ…?」
慌てて振り返ると、今度は後ろにいた三人が壁のように立ち塞がっている。
「えっ、あの、何か……?」
和也の戸惑いは隠しきれなかった。
自分は規則など破ったことも、他人に迷惑など掛けたこともない。
至って真面目にやってきたはずだ。
そんな和也の思考を遮るように、亮介が冷ややかな声で告げた。
「ちょっと付き合ってもらおうか」
その言葉と同時に、悠斗と拓海の二人が和也の両脇を抱えた。
強い力でガッシリと腕を掴まれ、抗う暇もなく引きずられるように歩かされた。
向かった先は体育館だった。
今日は誰にも使われていないようだ。
和也は不安に心を乱されながらも、抵抗する術もなく連れ込まれた。
亮介は和也の前に立ち、少し微笑むように言った。
「お前、純情そうな可愛い顔して、なかなかやるじゃないか」
その言葉に和也は目を開く。
「合宿の時、どうも様子がおかしかったから見ていたんだよ。そしたら案の定だったな」
そこで和也は、やっと状況を察した。
入浴の時のことだ。
見られていたんだ。
そして、夜中に服を脱がされたことも……。
「その身体、説明してもらおうか?」
亮介の冷たい声が、静まり返った体育館に響いた。
和也は、ただその場に立ち尽くしていた。
次の瞬間……。
「ちょいと、悪いけどな」
亮介がそう言うと、顎で命令した。
すると、亮介以外の四人の男達が、和也に襲い掛かる。
「や、やめて……!」
抵抗の声も虚しく、彼らの圧倒的な力で服を脱がされてしまう。
自分より遥かに体格の良い四人に仰向けにされ、手足も拘束されてしまってはどうすることもできない。
「くっ……!」
「お前、なかなか色っぽい身体してるよな」
その言葉に和也の頬が、かっと熱を帯びた。
「なんだ、これ……」
亮介の視線は、和也の胸元へと注がれる。
「男にしては随分と大きいじゃないか。誰かに大きくしてもらったのか?」
和也は、羞恥で目を伏せながら、震える声で答えた。
「それは違う……、生まれつきだ」
「生まれつきだって?」
亮介が笑うと、悠斗が口を挟んだ。
「確か、何かで聞いたことあるぞ。女性ホルモンが多いと男でも乳首が大きくなるって。ほら、たまに見掛けるだろ?男でも乳首がやたらデカいやつ」
「へえ、そういうことか」
亮介は頷き、再び和也を見下ろした。
「じゃあ、和也は女性ホルモンが多い訳か、すぐにでも女になれそうだな」
その言葉が引き金になったように、周りから嘲笑が湧き上がる。
「おい、本当に女みてぇな身体じゃないか」
拓海が揶揄するように言うと。
「こんなの見たことねえよ、すげえな」
それに続いて渉も言い放った。
「じゃあ、こっちは?これは生まれつきじゃないよな」
亮介がそう言いながら、下半身へと手を滑らせていった。
和也は、目尻に涙が浮かびそうになるのを必死に堪える。
「なんで此処がツルツルなんだ。自分でやったのか?違うよな、こんな綺麗にはできない。誰がやった。そんな相手がいるのか?」
和也は、激しい羞恥を覚えながら顔を伏せて堪えるしかなかった。
「……………。」
「お前、可愛い妹がいるそうじゃないか、お兄ちゃんのこんな姿、見せたくないよな。母親は一生懸命働いているんだろ。年寄りは大事にしなくちゃ……。家族を巻き添えにするような卑怯な真似はしたくないんだ。」
亮介は、落ち着き払って淡々と言い放った。
この無力な自分一人ではどうすることもできない。
ましてや、家族を引き合いに出されては……、そう思うと意を決するように、弱々しく頷いた。
「分かった……、話すから乱暴はしないでくれ」
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