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第13話

和也が中学三年生の冬のことだった。 年の瀬も近い頃、以前からどうしても観たい映画が公開されていた。 しかし、一人で映画館に入ることは出来ず、映画館の前を何度も行ったり来たりしていた。 だた、ポスターを眺めることしかできない。 数人のグループが笑いながら入館していく姿を目で追いながら……。 冷たい風が頬をかすめ、かじかむ手をこすり合わせる。 その時、ふいに後ろから声を掛けられた。 「映画が観たいんだろ?だったら私と一緒に入らないか。学校の規則があるんだろ?私もね、この映画観たいと思っていたんだよ。丁度いいじゃないか、私とだったら親子に見えるよ、お金も払ってあげるからさ」 振り向くと、そこにはコートを着た中年の男性が立っていた。 和也は一瞬迷った。 知らない人に着いていくのは良くない。 そんなことは小さい頃から何度も聞かされていた……。 だけどポスターに映る主人公の姿が頭に浮かんだ。 (どうしても観たい!) その気持ちが勝ってしまったのだ。 「いいんですか?」おずおずと尋ねる。 男は優しく頷いた。 チケット売り場で並び、指定された席に座り上映が始まると、和也はすぐに画面に夢中になった。 大きなスクリーンで観る映像は迫力があり、音響も素晴らしい。 家のテレビで観るのとは全く違い、すっかり物語に引き込まれてしまった。 映画が終わると、男は和也を連れて喫茶店に入り、クリームソーダをおごってくれた。 その日を境に、時々会うようになった。 映画を観たり、ファミレスで食事をしたり、話もじっくりと聞いてくれた。 それは、まるで父親のような存在に思えたのだ。 しかし、その関係は少しずつ変わり始めていく。 最初は優しかった男も、次第に和也に求めるものが増えていき、和也は戸惑いながらも、何も言えなかった。 少しずつ男との関係は深まり、後戻りできないほどの距離が生まれていった。

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