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第19話

「先生だって言ってたじゃないか、お前なら十分に大学目指せるって、母さんそれだけを信じて楽しみにしてたんだよ。市場の仕事だけじゃ足りなくて他にも仕事して、ずっと貯金してきたんだよ」 「大学って言ってもピンからキリまであるし、僕の行ける大学なんてたかが知れてるよ」 「だって男の子だろ、小さい頃から何処にも連れて行ってやれなかったし、苦労ばっかり掛けて。だからせめて大学くらいはいかせてやりたいんだよ。お父さんだって生きてたらきっと同じこと言ったと思うよ。…ああ…お父さんさえ生きていてくれたら……」 つい、心の内がこぼれてしまう…。 「済んだこと言っても仕方ないよ。お爺ちゃんだって最近体調が良くないし、もしお母さんが先に倒れでもしたらそれこそ大変だよ。少しは休まないと、働きづめじゃないか…だから僕も一緒に働くよ」 「それで、いいのかね……」 親や家族を想いやる、そんな優しい子に育ってくれたことは本当に嬉しかった。だけどやっぱり親としては……せめて最終学歴までは行かせてやりたかった。 その想いが胸に残ってしまう。 残念さと無念さの方が今はどうしても勝っていた。 和也は、先々のことはまた考えるとしてまずは母親と祖父の負担を少しでも軽くしてやりたい為、市場で働くことを考えていた。 そしてしばらくして、ふいに関岡祥太郎が訪ねてきた。 「おう、祥太郎。お前受験どうだった?心配してたんだぞ」 「えっと、まあ…それが何というか、一校だけ受かったよ……」 「そうか!良かったじゃないか!」 「第一志望は落ちたけど、まあこれも実力ってやつだな、受かったところに行くことにしたよ。浪人って柄でもないしさ」 「うん、そこの学校お前に合っているよ…」 「そうだといいけどな、なかには二つも三つも受かってさ、どこ行こうか迷ってる奴いるだろ?(これで俺の人生どう変わるんだろう)なんて悩んだりしてさ、でも俺はその点楽だよ。受かったのは一校だけだし選びようがないからな」 「そうだよな、いくら沢山受かったって実際に行けるのは一校だけだもんな」 「和也は良かったのか?大学行かなくて」 「親にも色々と言われたけど、大丈夫!迷いも後悔も全くないんだ」 「そうか、それだけの決心があるなら安心したよ」 「大学行っても遊びに来いよ」 「ああ、分かった。お前も頑張れよ」 「うん。……お互いにな」 高校生活の三年間を共に歩み、支えてくれた大切な親友。 祥太郎。 その成功と幸せを和也は心の底から願っていた。

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