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第24話
それから数分間車に乗ると、少し年月は経ってはいるものの、落ち着いた感じの小綺麗なマンションに連れていかれた。
「ここは会社が用意してくれた部屋なんだ、家賃は半分負担してもらえる」
佳孝は、そう説明しながら案内してくれたが、和也にとってその内容自体はどうでもよかった。
エレベーターのない四階建ての三階にその部屋はあった。
階段を上がるにつれ、胸の内に理由の分からない緊張が溜まっていく。
不安を抱えながらも促されるまま足を踏み入れる。
間取りは2DK位であろうか、奥にはベッドの置かれた寝室らしい部屋が見える。
佳孝は入るなり、急いで扉を閉めた。
その瞬間、和也はそれ以上奥へは進めず立ち尽くしたまま動けなくなった。
佳孝が近づこうとすると思わず身を引いてしまう、まるで何かを警戒しているかのように……。
「おい、変な勘違いをするな、話を聞いて欲しいだけだ」
そうは言われても、和也の緊張は簡単には解けない、どうしても身構えてしまう。
さらに佳孝が近づこうとした━━のように見えた、いきなり和也は踵を返し、出口に向かって逃げようとした。
「待てよ……!」
追ってきた佳孝に腕を取られ引き戻される、そして身体の向きを変えられ、向かい合う形になり腰を強く掴まれた。
その動きは唐突だった。
その時、一瞬、過去の記憶が脳裏に蘇る……。
ふらつく身体をいつも支えてくれたあの時の腕の感触を……。
驚いて見上げると、佳孝は目を逸らさず…ただ和也をじっと見つめていた。
「頼む!…乱暴はしたくない、話を聞いてほしいだけだ。外ではどうしても話しにくいから、ここまで来てもらったんだ」
和也は一度、目を伏せた。
胸の奥でざわついていたものが、少しずつ形を変えていく。
再び顔を上げ、佳孝を見る。
その眼差しに欲や衝動がないことに和也は感じ取った。
「……分かった」
小さく頷くと、佳孝はすぐに応じた。
「じゃあ、手を放すから…」
念を押すように言ってから、ゆっくりと力を抜いていく。
その離し方があまりにも慎重だった。
「逃げたりするんじゃないぞ…」
「……うん」
完全に開放される。
距離はきちんと戻され、触れていた体温だけが名残のように意識に残る。
「じゃあテーブルを挟んで、お前はそっちの端に座れ、俺はこっちに座る」
和也は言われたとおりに腰を下ろす。
二人の間には明確な距離が置かれた。
その距離は、拒絶ではなく守られた線だった。
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