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第27話

「シャワーありがとう。助かったよ」 「……だいぶマシになったじゃないか。それなら大丈夫だよ」 佳孝の言葉は、穏やかだった。 遠慮がちにしている和也に、声を掛けた。 「コーヒー淹れたから飲んで行けよ」 カップが二つテーブルに並ぶ。 佳孝は自分にはブラックを、和也には砂糖とミルクを添えて出した。 昨日、カフェでそうやって飲んでいたのを覚えていたのだろう。 そのことに、ほんの僅か胸がざわついた。 「いただきます」 …温かい飲み物はありがたかった…。 和也は礼を言い、一気に飲み干した。 カップをすぐに流し台へ片づける、これで帰れる…そう思った矢先、佳孝に投げかけられた言葉に思わず固まる。 「ライン、交換しないか?」 和也は動きを止めた……。 耳の奥に残るその言葉を、ゆっくりと頭の中で反芻する。 ……ライン!?…… なぜ?……正直、この男とはこれ以上関わるつもりはない。 昨日、佳孝は過去のことをきちんと謝ってくれた。 自分なりにその言葉に対する答えも出した…それで終わり。 それ以上、何も望まないし、望んでほしくもない、これで終わりにしたい、そう言いたかったのだ。 けれど、すでに佳孝はスマートフォンを開いてこちらの反応を待っている。 その目は、どこか真っすぐだった…。 その姿を見てしまったら、もう無下には断れなかった。 「ああ……いいけど」 そう言って、和也はポケットからスマートフォンを取り出す。 内心で舌打ちしながらも、指先は淡々と機械を操作していた。

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