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第42話

当日の朝。 和也は、約束の時刻ぴったりに佳孝のマンションを訪れた。 何日も胸の奥で温めてきた「自分にできること」を、ようやく形にできると思うと、自然に頬が緩んでいた。 インターホンを押すと、数秒ののちドアが開いた。 「おはよう、相変わらず忙しそうだね」 「ああ、おはよう……今日は楽しみにしてたよ」 佳孝はそう言って笑みを見せたが、次の瞬間、和也が両腕に抱えた二つの 大きな紙袋に目を止めた。 「……その荷物、どうするんだ?」 「ふふん…ちょっとね」 和也は得意げに笑うと、室内を見回しながら尋ねた。 「ねえ、布団って、あそこのベッドのしかないの?」 「うん、そうだけど……?」 「じゃあ、ちょっと借りるね」 そう言って、和也はベッドから敷布団を引き出し、居間の床に丁寧に広げた。 そして紙袋の中から真っ白なシーツを取り出し、その上に被せる…さらに、ふかふかの大きなバスタオルを重ねた。 その一連の動作を、佳孝は目を丸くして見ていた。 (いったい何が始まるんだ……?)と、言いたげな、半ば呆気に取られたような表情だった。 準備を終えた和也が、彼に向き直る。 「これから、気持ちいいことしてあげるよ」 「えっ……!? いや……あの……えっ……?」 佳孝は、一瞬たじろぎ、どんな反応を返せばいいのか分からず、戸惑った様子を見せた。 すると和也が、優しく笑って言った。 「前にちょっと話したでしょ? 資格を取る為に勉強してるって…あれね、実はアロママッサージだったんだ。まだ習い始めたばかりで下手かもしれないけど、でも…佳孝、いつも仕事で疲れてるみたいだったから、少しでも 癒してあげたいと思って…」 その言葉に、佳孝は……。 「ああ、アロマ……ね、そういえば資格を取る話ししてたな、思い出したよ」 そして、ようやく状況を理解したように柔らかな笑みを浮かべる。 「なるほど、それが “ささやかなお礼”って訳か……ありがとう、嬉しいよ」 和也の、ささやかな決意が…やっと静かに、しかし確かに、佳孝の胸に届いた瞬間だった。

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