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第7話 令和の料理男子3
「おはようございます、瀬名さん」
「おはようございます」
職場についたオレはゆっくり席に座った。
まだ腰が重だるい。あらぬところにも違和感が残っている。ゆうべは深夜まで貫かれて何度も絶頂に追いやられたのだ。
くっそ、琥珀め。何が「誰とも経験したことのない快楽をあげるよ」だ。めちゃくちゃしんどいじゃねーか。
いや、確かにすごく気持ちよかったけど、こんなに疲れるなら先に言っておけよ。
これまで知らなかった自分の体の奥を開かれて、琥珀の手や舌で愛撫され、最奥を突かれるのは想像していたのとはまったく違っていた。抱く側の経験しかなかったけれど、大体想像はつくと思っていたが、抱かれる側があんな感覚で、気持ちいいとは知らなかった。
ていうか、ネコの奴らはいつもこんなにしんどいの? これから先、エッチする時は加減してあげなきゃだな。
パソコンを立ちあげ、カフェオレのペットボトルを開けて、オレはため息をついた。
今朝は琥珀に起こされてシャワーを浴びるのを手伝われた。腰がふらついて倒れそうだったからだ。
指先で優しく髪を洗いながら、琥珀は蕩けるような笑顔で言った。
「ゆうべは素敵だったね。セナはやっぱり俺に愛されるようにできてると思うんだ。あんなに感じやすい体で気持ちよくなれるのにタチだけってもったいないよね。この腰のラインとかとてもきれいだし、このままネコちゃんでいいと思うよ」
朝からそんな台詞がすらすらと出てくるあたり、琥珀はどうかしてる。
シャワーから上がったらソファで髪を乾かされ、朝ごはんは鶏そぼろの雑炊にナスとオクラの煮びたしだった。テキパキとよく動く手に出勤準備を整えられて、オレは家を出てきた。
それにしても、確かに理想の攻め様のセックスを経験して、オレは考えてしまった。これまでオレは相手をあんなふうに感じさせて、抱いていたか?
自分のセックスが人と比べて下手だと思ったことはないが、昨夜の琥珀がオレにしたような濃厚な愛撫を相手に施したことはない。
理想の攻め様はいつもあんな丁寧なのか? それともあれは琥珀が好きなやり方なのか?
あるいは琥珀が言ったようにオレは感じやすいのか?
いやそんなはずはない。しっかりしろ、琥珀の言うことに惑わされるな。
「瀬名さん、大丈夫ですか?」
「え? ああ、大丈夫」
パソコンに向かって眉間にしわを寄せるオレを、隣の席の同僚が不審そうな顔で見ていた。
「体調でも悪い?」
「いや、ちょっと考え事してただけ」
「そっか。ここのとこ暑いからな」
「そうだよな。ちょっと異常だもんな」
暑さのせいにして愛想笑いを浮かべたオレは、定時になると早々に会社を出た。
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