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第110話 エストレヤ イグニス
朝食や昼食、放課後はずっとアティが側にいてくれる。
移動教室の際に偶然フロイント様やティエンダ様に会えば、二人は必ず声をかけてくれるようになった。
それだけで心が救われた。
けど…ずっと教室にいると言葉が聞こえてくる。
「グラキエス様だけじゃ物足りなくて王子に手を出すってがめつすぎ。」
「パーティー会場でグラキエス様に飲み物取りに行かせてる間に王子って…。」
「休んでいる間も男達と代わる代わるだったらしいよ?」
「そんなにしたいなら、そういう職業に就けば良いのに。」
「高位貴族ってだけで何でも許されるからって、やり過ぎ。同じ貴族って思われたくないわぁ。」
「薬使ってたんでしょ?」
「なら、グラキエス様との婚約の時もそうなんじゃ…。」
「だよね?グラキエス様大胆すぎるのも薬を使ってたっていわれると納得だよ、」
「なら、今も…?」
「絶対にそうでしょ。」
「うわぁ…やり過ぎ。」
…違うのに。
僕そんなこと…してない…。
僕は誰にも言い返すことも出来ず、自分の席でじっと耐えるしかなかった。
移動教室で席を立つ時も態ととは思いたくないけど、よく人とぶつかるようになった。
毎日刺すような視線を感じで苦しかった。
それでもアティが抱きしめてくれたり、フロイント様やティエンダ様の存在で耐えられた。
「イグニス様よろしいですか?」
「ぁっはい?」
何だろう?
教室で僕に声をかける人なんて…悪い予感しか…。
「大丈夫ですか?」
「へっ?」
彼は子爵家のモブ クラウド様。
今までに話したことは一度もなかった。
「最近皆さんイグニス様の話題で持ちきりなんで。」
「…ぅん。」
それは…分かってる…。
アティと婚約する前からいろんな人に酷いこと言われて慣れたと思っていたけど、やっぱり辛い。
最近はずっと幸せ過ぎて忘れてた…この痛み…。
「実際の所どうなんですか?」
「へ?」
「僕にも教えて欲しいんです、媚薬の事。」
「………」
媚薬の事…。
「僕も欲しいんです、どこで手に入れたのかとか使い方とか教えてください。」
ちがっ、僕そんなの使ってない。
「僕、媚薬なんてっ。」
彼は僕が媚薬を使ったと思ってるんだ…。
「またまたぁ、誰にもいいませんからっねっ。」
彼の言葉に周囲にいた人達も一斉に僕を見た。
「ざっ」と音がなったように皆が僕に振り向いた。
「…本当に僕、使ってません。」
「……何言ってんの?誰もそんなこと信じませんよ。」
先程まで優しい笑みだったのに一瞬にして表情が変わり、突き刺すような瞳で僕を見続けてくる。
「………」
「グラキエス様を可笑しくさせたのも、王子が学園に来ないのもイグニス様が媚薬を盛ったからですよね?」
首を振り周囲を見渡すと、教室にいる全ての生徒が僕を疑いの目で見ていた。
「毎日グラキエス様の部屋に行ってるのって、媚薬飲ませてるからですよね?」
そんなことしてないっ。
「ちっ違いますっ。」
「媚薬騒ぎが合ったのは皆知ってます。先生達も核心は隠しているけど、事件については調査中と言ってました。それは学園で起きたことは僕達の親に真実を報告する義務があるから…侯爵家が公爵家に媚薬で婚約者の立場をもぎ取っただけじゃなく、王子までとなったら徒で済まないのに…侯爵の力を使えば何でも許されると思ってるんですか?」
「………」
違うと言いたいのに声が…出ない。
彼だけじゃなく他の皆もそう思ってるんだ。
怖いっ。
助けて…。
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