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第124話 覗きました…その…ごめんなさい…ネイビーブルーの者です

男爵家の僕は爵位の中でも当然下位だけど、男爵の中でも下位であり部屋は二人部屋だった。 相手は男爵家の人だけど余り仲良くはない。 部屋に戻ると彼と二人きりになり、なんとなく上下関係が生まれていたのでなるべく構内にいて良いギリギリの時間まで校舎をうろうろしていた。 図書館や教室は高位貴族の方々と鉢合わせることがあり居心地が余り良くない。 僕はなるべく誰ともか変わる事なく一人でいたかった。 そこでようやく見つけたのが個別室だった。 個別室に来る人は少なく、例え居たとしても使っている部屋を覗く者は居ない。 今日も僕は一人ギリギリまで個別室で時間を過ごすつもりだった。 いつも使っていた部屋の扉が少し空いていたので、先客が居るのかと深く考えず隙間から覗いてしまった。 普段なら覗きなんてしないのに、なんで覗いてしまったんだ…。 部屋からは「あんっんんぁん」と聞きなれない声が聞こえた。 叫び声とも違う種類の声に犯罪?と不審に思い中の様子を真剣に覗いてしまった。 誰かがソファに倒され衣服が剥ぎ取られていく。 強姦? あまりの恐怖に足も動けず声も喉に張り付き叫ぶことも出来なかった。 助けてあげたいのに身体が強張って、僕の思いどおりに動いてくれない。 彼を助けたいのに弱虫の僕には何も出来なかった。 「んっんふぅんんっんっ…アティんっんやぁんそれっ」 「香油がねぇんだ。」 「ん~んっ」 「次は用意しておく。」 「んっ…ふぁっ…んっもっ…してっ。」 「まだ、だめ解れてないだろ。」 「ん~ん゛っん~」 彼らの会話に疑問が生まれた。 襲われていると思っていた子から「もう、して」と催促していたからだ。 拒絶の言葉ではなく求める発言に困惑した。 僕の聞き間違いなのだろうか…。 良く見ようと二人の顔を確認するも覆い被さっている人の後ろ姿しか分からなかった。 覆い被さっている人の髪色はプラチナブロンド…この学園にはとても珍しい髪色。 そしてソファで顔を隠しているが押し倒された彼の髪色は燃えるように赤い髪色だった。  僕は知っている。 いや、僕だけでなくこの学園にいる者なら全員が知っているであろう婚約者達だ。 彼らの名は、グラキエス様とイグニス様だ。 今現在この学園の噂は彼ら中心に回っている。 グラキエス様は王子の婚約解消に記憶喪失、その後イグニス様との婚約。 そして二人の親密すぎる距離。 誰もが驚き困惑し目を離すことが出来ない二人。  グラキエス様の変わり様や、イグニス様の妖艶な表情。 そして、厳格すぎる学園での心を乱すような情景。 婚約者に対しても距離を取り潔癖すぎるような風潮があったのは、王子とグラキエス様を見て多くの人たちが手本にしていたからだ。 それが浸透しきっている中での二人の関係はとても刺激が強かった。 誰の目も気にせず抱き合い唇を重ね合う二人。 このような行動が許されるのか頭が追い付かなかった。 確かに教師からその様な注意を受けたことはないが、高位貴族のグラキエス様と王子を手本にするのが暗黙の了解だった。 その手本が崩れ、グラキエス様は…。 僕には婚約者も恋人もいないから、イチャつく事に対して何も思わなかったし深くは考えていなかったけど…。 こんな光景を偶然見てしまい、学園でこんなこと…風紀がぁなんて考える余裕はなかった。 僕は先程以上に身体が硬直し声もでなかった…というより出さないよう必死だった。 「何見てんの?」 「ひゃっん゛ん゛ん゛ん゛ん゛。」 突然後ろからの声に叫び声をあげそうになった。 「声だしたらバレちゃうよ。」 背後にいる人物に口を覆われ叫び声はなんとか押さえ、部屋の中にいる二人にも気付かれずにすんだ。 「んんんん。」 「んーおっ…へぇ~」 中を覗き見るこの人の目は何だかイヤらしかった。 こんな人に二人の情事を見せて良いのか? 僕が引き剥がすべき? 「………」 「あの二人の情事を盗み見してたの?」 「ちっちがっ」 それはあんたでしょ。 「どっちに興味があるの?冷血公爵?それとも性悪侯爵?」 「違いまっ…。」 変なことを言われ小声ではなくなりそうになり、再び口を塞がれた。 バレた? 「んああ゛んん゛っん」 確認の為に聞き耳をたてれば中から艶っぽい声に意識を持っていかれ、部屋の様子を覗いてしまった。 色白の細くて長い脚がグラキエス様の身体に絡み付く。 僕は知らない行為だけど、グラキエス様の動きも卑猥に見えてくる。 あのグラキエス様が…。 「いつまでもここで見てるわけにはいかねぇぞ。」 この男の言う通りだった。 「来いよ。」 硬直していた僕を扉から離し、男の人が静かに扉を閉める所を眺めていた。 誘導されるように見知らぬ男に肩を抱かれながら隣の個別室に入っていた。 鉛のように動かなかった脚が動くようになっていたことに気付き、更にこの男に抱き寄せられている現状を理解した。 「ちょっあのぉ…」 「ん?」 「離れて。」 僕よりも二十センチは背が高く、身体の大きい彼の胸を押し退けた。 「んで、なんで覗きなんか?」 「覗きなんて…」 誤解だ、僕は覗くつもりじゃなかった。 「覗いてたろ?」 「違うっ扉が開いてて。」 「…開いてた?」 「開いてたんです。」 「………」 目の前の男の人は、疑った目で僕を見てる。 きっと僕が扉を開けて覗いたって思われてる。 違うのに。  本当に扉は開いてたのっ。 「それであの二人の行為を覗き続けたのか?」 「…ビックリして…脚が動かなくなっちゃって…。」 「ふぅん」 「本当ですっ。」 嘘じゃないのに、必死になればなるほど自分でも嘘っぽく感じる。 「ふぅん。」 「なっ何ですか………ぁっ」 距離を詰められ後ずさるも、壁に遮られ逃げ場を失い状況確認で男から視線を外し隙を見せてしまい、顔の横に手をつかれ相手の顔が近付いていた。 怖くて首をすくめて顔を背けた。 「…ひゃん」 男が怖くて顔を背けると、無防備になった首を舐められてへんな声出してしまった。 「同じ事してみる?」 耳元で囁くように言われる。 混乱している頭では言葉の意味を理解するのに時間が掛かってしまった。 返事を出来ずにいると、僕のものが突然刺激を受けた。 何が起きたのか確認するとズボンの上から大きな手で覆われている。 「あっあっやっやめっ」 「固くなってる。」 「…あっ…あっ…こっ…」 「二人の見て興奮してたんだろ?」 「…ちがぃます。」 「ホントに?」 「んぁっんん。」 僕の言葉を否定するように、僕のを確りと握られた。 僕自身気付いていなかったが、確かに僕のものは固く反応し主張している。 「素直になれよ。」 「…やめっ…んっ」 男の顔が首元にあり息が掛かる。 腕と顔で左右を塞がれ僕のモノも人質に取られ逃げられない。 「良い匂いだな。」 「や…やめて…ください。」 この場から解放されたくて、男にお願いするしかなかった。 「ん~こういうことに興味があるんじゃないのか?」 「ごめんなさい。」 「なんで謝るんだよ。」 「もう…覗かないから…。」 許してください。 「そんなに怖がんなよ、気持ち良くなろうぜ。」 「……こわっい…」 つい本当の言葉を口にしてしまった。 「怖くねぇよ…したことあんだろ?」 「………」 したことって何を? 貴族は貞節を重んじられるから、婚約者のいない僕が…そんなことしたことない。 …自慰の事? 「ねぇのか?」   自慰の事だとしても…。 「………」 そんなこと恥ずかしくて答えられない。 「誰かに触れられるのは?」 誰かに触れられたことなんてないっ。 勢いよく僕は首を振った。 「そっか。」 男は僕の答えに楽しんでいるように思えた。 「来いよ。」 男の手に引っ張られ、ソファの背凭れに寄り掛かる男に後から抱きしめられ、再び僕のモノを握られた。 相手の手が僕のに触れると予感していたことなのに「ぁん」と啼いてしまった。 本当なら逃げたかったが、相手が急に暴力とか振るうんじゃないかと怖くて大人しく男の腕の中にいた。 「気持ちいいのを追いかけてれば良い。」 無理矢理なはずなのに男の声を優しいと感じてしまった。 片腕で僕の事を抱きしめて、もう片方の手で握られる。 布越しなので触られている感覚はあるが、なんか…もどかしい。 「直接触って良い?」 直接? 直接って僕のを触るってこと? 「………」   どうしてこんなこと? 「触りたいんだけどダメ?」 「………」 ダメ? ダメじゃない…って思っている自分がいる。 どうして?怖いって思ってるのに…手が優しいから? …どうしよう…。 返事をせず悩んでいたら、ズボンに手を掛けられパンツの中にするりと手が入っていった。 「ぁっ…」 逃げ場のないパンツの中で呆気なく囚われ、握る強弱をつけ扱かれる。 他人の手を知らないそこは、恥ずかしいくらい簡単に反応を強め僕はいつの間にか僕を拘束している男の腕にしがみついていた。 「パンツから出して良い?」 パンツから出す? ってどういう意味だ? パンツから出す…。 …だめっ、見られちゃうと思い僕は慌てて首を振った。 「ならパンツの中に出す?気持ち悪くないか?」 パンツの中に出す…? パンツの中に出す…あっあれを?あれを出すってこと? それは…ちょっとヤダ。 ここは学園だし、寮まで距離有るし漏らしたみたいで恥ずかしい。 「…どうしよう…。」 「パンツから出してイッた方が気持ちいいぜ。」 「………」 「見られんのが恥ずかしいのか?」 「ん」 「皆同じだろ?」 ふと男のものを背中に感じ反応して固くなっているのがわかった。 「俺のも見る?」 反射的に首を振った。 他人のなんて見たことないし…怖くて観ることができない。 「そっ、残念。見たかったらいつでも言えよ。」 「………」 この人の事がわからない。 なぜそんなことを言うのか。 言ったら見せてくれるの? 僕達ってどういう関係? 「なぁ、パンツから出すぞ?」 返答に困っていると、僕の許可無しにズボンとパンツが下ろされてしまった。 「ぁっ…見ないで。」 「止めて」ではなく「見ないで」と言っていた。 「皆同じだから気にすんなよ……チュッ」 首筋にキスされた。 なんでキス? どうして僕にキスするの? わかんない。 どういう事?  外気に触れ露出しているのを体感し、次第に脚が内股になっていく。 男は僕のを包み込み、摘まんだり先端をグリグリしたりと様々な刺激を与えてくる。 自分でするより気持ちいい。 「だっめ…でちゃ…。」 「出せよ。」 人に見られてイクなんてしたことないし、見せるもんじゃないよね? 婚約者でもない人に…そんなこと出来ない…恥ずかしい。 僕が必死に我慢していると、摘まむ手に力が込められ爪まで使い痛みのような刺激に翻弄される。 男の腕に縋り付き「あぁん」とイッてしまった。 「はぁはぁはぁはぁ」 呼吸が乱れる。 初めて他人の手でイカされ更に…見られてしまった…。 「気持ちよかった?」 後から確り抱きしめられ顔が近くにあり、僕はいつの間にか後ろの男に完全に体重を預けていた。 急な展開についていけず、素直に「うん」と頷いてしまった。  僕のものを握っていた手が僕の放ったものを掬い取り、何が起こるのか先の読めない展開に男の手を追っていた。 男の指が綺麗だなぁと眺めながら何をするが見続けると、相手の顔が視界に入る。 この人…こんなに格好良かったんだ。 グレーの髪に瞳。 口が色っぽいな…え? 「だめっ…ぁっ」 男は僕の目の前で僕の出したものがついた指を舐めた。 「………」 あんなものは舐めるものじゃないのに…。 あまりの出来事に止めたかったのに男の唇を見つめてしまっていた。 「…お前名前は?」 名前…僕の名前…頭が理解できない状況でも、今自分の名前は答えてはいけない気がするのはなんとなくわかった。 けど、知って欲しいという思いもあった。 なんでだろう…。 僕は無理矢理されたのに…。 きっと、学園に通って名前を聞かれるなんて久しぶりだったからだ。 かろうじて貴族に引っ掛かっている僕なんて、ちゃんとした貴族からしたら認めない存在で興味すらもたれない。 この学園で僕の名前を知っている人は両手…いや片手くらいかもしれない。 「………」 「良いのか?公爵家と侯爵家の情事を覗いてたってバラされても。」 男に絆されたわけじゃないけど、気を許してしまった所を途端に脅された。 やっぱり信じちゃいけなかったんだ…。 この人は悪い人…。 「…っカ…カラン ベヌスタ…です。」 観念し名前を名乗った。 これがどういう事になるかはまだ想像できないが、良くないことだと言うのは理解していた。 「カランね、カラン明日もここに来いよ。」 初対面なのに下の名前? 「…それはっ…」 明日も今日のように? 「あの二人には黙っててやるよ。」 「………はい。」 僕は頷くしかなかった。 二人とはグラキエス様とイグニス様のことだろう。 そんな二人の情事を覗いてしまいましたなんて…彼ら二人は高位貴族。 雲の上のような人達の情事を盗み見たなんて知られたら…。 僕はもうこの人から逃げられなくなった。 「じゃあ明日。」 男は僕を置いて出ていった。 はしたなく僕のものは露出したままだ。 どうしてこうなってしまったの? 僕はただ、一人になりたくて来ただけなのに…。 僕のが先にあの場所を使ってたのに…。 いつも部屋に入ろうとしたら先客がいて動けずにいただけなのに…。 どうしてこんな目に…。 知らないうちに涙がこぼれた。 家族意外の人に名前を呼ばれたのに嬉しいことはなく、恐怖だけだった。

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