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第136話 僕が分かる? エストレヤ イグニス

広すぎるベッドで一人、目を覚ました。 「アティに会いたい。」 声に出すつもりはなかったのに、気が付いたら呟いていた。 服はサイズの合った物をお父様が用意してくれたので、そちらを着ることにした。 食堂で皆と朝食を取り、僕とお父様は談話室に待機した。 アティにいち早く会いに行きたかったけど、公爵様が向かったので大人しく待つことにした。 ばたん 昨日僕に紅茶を淹れてくれた優秀な使用人なのに、ノックや確認なく乱暴に扉を開けた。 音に驚き反射的にお父様と共に扉を向いた。 「アティラン様がお目覚めになりました。」 ずっと待ち望んだ言葉。 その言葉で僕の頭からは使用人の無作法なんて何処かへ行ってしまった。 ソファから立ち上がり駆けるように使用人さんの元へ。 後からお父様も早足でくるも、僕は振り返ることなく走ってアティの部屋を目指した。 他所様の…格上の方の屋敷を走り回るなんて、してはいけない事だったけどアティに会いたい気持ちでいっぱいでそれどころではなかった。 お父様も僕を注意することはなかった。 アティの扉の前ではなんとか立ち止まりノックをすることが出来た。 「エストレヤです」と告げれば「どうぞ」と公爵様の許可を得ることが出来た。 扉を開け部屋に入ると公爵様に重なり見えないが、起き上がっているアティが見えた。 「アティ…」 さっきまであんなに走ってしまっていたのに、アティの姿を見たら急な足がゆっくりになった。 早くアティの傍にいきたいのに…怖い。 アティとの距離が縮まるにつれ不安が増していき、公爵様が場所を譲ってくれた。 アティと目が合うもいつものように… 笑ってはくれない。 「アティ?」 呼び掛けても返事もない…。 次第に心臓が壊れそうに締め付けられた。 「アティ…僕の事…分かる?」 お願い「分かる」っていって「エストレヤ」って名前て呼んで。 「すげぇ俺の好みの奴がいる、来いよ。」 …もしかして覚えて…ない? アティに手を伸ばし促されるままベッドの上に乗りアティに跨がった。 「僕の事…覚えて…ない?」 声が震えてしまっていた。 アティ…。 「俺達ってどんな関係?」 「…っ…僕達は…婚約者です。」 「ふぅん、俺の事どう思ってる?」 「アティの事、大好き。」 「へぇ…ならさぁ…。」 「ぅん?」 「キスして。」 「…ぅん」 公爵様やお父様が同じ空間にいるというのは頭に合ったけど、恥ずかしいという気持ちはなかった。 キスしたら記憶が戻るかかもって期待してしまう。 うんん、喩え記憶がなくても僕の事を好きになってほしい…。 その願いが叶うなら僕から何度だってキスをする。 軽く触れ合うキスをして離れた。 「…それで思い出せるかよ。思い出して欲しかったら…分かるよな?」 「んっ」 アティの首に腕を回し唇を重ねた。 触れ合うだけでなく舌を絡めるキス。 眠るアティとは出来なかったエッチなキス。 エッチな音が生まれて後頭部しか見られていないがお父様にも聞かれているかもと、頭を過ると途端に恥ずかしくなり唇を離した。 「ん?ん~ん、思い出せそう…もう一回してくんねぇ?」 「ぅんっ」 思い出せそうと言われると、もう一度唇を重ねた。 「お願い思い出して」という思いを込めて一生懸命舌を絡めた。 腰に腕を回されキスを受け入れてくれているのに少しだけ安堵した。 記憶がなくても僕とキスしてくれてる。 また、僕を好きになってくれるかもと期待してしまう。 キスに夢中で気付くのが遅れたけと、アティの手がエッチになりだした。 いつもアティを受け入れいる箇所に指が当たってる。 記憶を失ってもアティはエッチだった。 嬉しくなってお父様がいるのをすっかり忘れてエッチなキスに夢中になった。 「んん゛?エストレヤ゛っ離れなさいっ。」 突然のお父様の声に驚いたけど、唇を離すことはなかった。 というより離すことが出来なかった。 アティに頭を押さえられキスを続行するしかなかった。 「エストレヤ、アティラン様は記憶を失ってない゛。」 「ん?」 本当? お父様の叫び声に驚いて閉じていた瞼を開けた。 目があったままキスを続けると、意地悪なアティがいた。 記憶…失ってない? 言われるといつものアティのキスのように感じる。 アティだから記憶を失ってもキスの仕方は同じなのかなって思ったけど、記憶失ってないの? 頭を押さえられ一向にキスが終わらなかった。 どうしよう、皆に見られてないけど久しぶりのアティのキス…。 気持ち良くて僕のが反応しちゃってる。 「アティラン」 公爵様の言葉が合図となり唇が離れた。 「アティ?僕の事…。」 「俺がエストレヤを忘れるわけねぇだろ?」 「うっぅっうっんっん゛ん゛」 「泣くなよ…ちゅっ」 アティだ。 僕の知ってるアティが帰ってきてくれた。 離れたくない。 「エストレヤ、アティラン様は目覚めたばかりだ。」 「…はい」 病み上がりでアティの上から降りなきゃと思うのに、アティから離れたくないという思いと離れたら皆に僕のがどうなってるから知られてしまうという思いでなかなかアティの膝の上から降りられなかった。 「エストレヤこのままでいろよ。」 「ぇっ、でもアティが…。」 「俺は平気、離れたくないんだよ。」 「…ぅん、僕もっ。」 アティは更に抱き寄せ、僕のを隠してくれた。 「アティランどのくらい覚えてるんだ?」 「どのくらい…。」 「最後の記憶は?」 「ん~なんだったっけな?」 「授業で魔力を使いきったとか。」 「…あっそうだ、魔力切れになりながら階段上ってたら金髪野郎に突き落とされたんだ。」 突き落とされた? 事故じゃないの? 「…金髪野郎とは?」 …そうだよね、金髪野郎じゃ分かんないよね誰だか…。 「んぁ?あぁ、元婚約者。」 「………そうか…、ではどうする?目撃者もいるしアティランの証言だけでも王族に抗議することも出来る。」 アティが王子を金髪野郎と呼んでいるのを公爵様やお父様は驚いていたというより困惑?していた。 僕もアティが王子を金髪野郎と初めて聞いた時、金髪野郎が王子だと結び付かなかったというか、結び付けて良いのか困惑した。 何でも寛大に許している公爵様も一瞬表情が止まったように見えた。 「あぁ、抗議してもあいつ変わんねぇと思うけど…。」 「だとしても、公爵家が何の理由もなく暴行を受けたんだ。三日も目を覚まさない程の事を無かったことになど出来ない。きっちりと報告する。」 「ふぅん、ならあいつと話したいんだけど。」 「それは構わないが、平気か?」 「一度確り話さないとあいつは諦めないと思う。俺だけじゃなくエストレヤにも被害が行く可能性がある。そうなる前に出来ることはしておきたい。」 「分かった。」 僕は二人が真剣な話をしていたので存在を消すようにアティに抱きついていた。 このままで良いのか分からず視線を彷徨わせていたら、お父様と目があった。 「降りなさい」とお父様の口が動いたように見えた。 僕も「うん」と頷き降りるタイミングを見計らっていた。

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