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第145話 店が出来…これが婚約者

最近では色んな事がありすぎて忘れていたが、店が出来ていた。 ティエンダとコンパーニョが中心となり動いていたらしく、開店初日に皆で行くことになった。 驚いたことに教師も一緒だった。 教師が一緒に行くことに驚いたのではなく、教師がボンド ガウディぺディオの恋人だと言われた事に驚いた。 二人は親同士が知り合いで幼い頃からの仲らしい。 教師となり距離を置かれていたが若さでガウディぺディオが押しきり、今は恋人同士なんだとか。 三人は伯爵家でティエンダ、コンパーニョの二人に婚約者がいてガウディぺディオにはいないにも関わらず、俺達にちょっかいを出していた子爵がガウディぺディオにはなにもしなかったのは教師と恋人なのを知っていたからかもしれない。 ガウディぺディオとは共同経営仲間だが、あまり話したことが無かったがこのメンバーでは噂などに詳しいらしく色々と聞いてみた。 「リヴァル ヴィシャスについてか?」 「あぁ、ティエンダは何も気付いてなかったし、コンパーニョは婚約者の友人くらいにしか思って居なくてね。何か知らないかと思って。」 「……アイツは爵位の高い奴にすり寄って、自分が婚約者になろうとしていた。」 「それ、ティエンダには言わなかったのか?」 「あぁ、ティエンダはアイツの事なんて名前も知らない程興味がなかったからな。態々話して意識させるくらいなら今のままで問題ないと判断した。」 「…そうか」 「あぁ、あいつがグラキアス様に乗り換えた時は嗤ったよ。どっからどう見ても無理なのにあんたに近付いていくのは勇者じゃなくただの無謀だ。もっとズル賢い奴だと思っていたけどな。」 「ふぅん。あれが今どうしてるか分かるか?」 「あいつはティエンダ意外にも数人粉かけてて、今はそっちに夢中かな。一人は婚約者有り、んでもう一人は居ない…が人気の奴だから、どうだろうな。」 「結構情報通だな。」 「俺の相手は教師だからな、それだけでも色々有るから少しでも情報は有った方がいい。」 「そうだな。」 「んで、グラキアス様の方は?」 「俺?」 「元彼とは解決したのか?」 元彼…ね…。 「あぁ、漸くな。」 「おつかれさん」 「なぁ、ガウディぺディオから見て以前の俺たちってどんな風に見えた?」 「ん~?王子の方はグラキアス様を意識しまくりで空振ってたな、グラキアス様は通常運転過ぎて感情が見えなかった…けど、一度あの人が告白されるところに居合わせたことがあったんだよ。相手は明らかに爵位目当てで王子の第二妃狙いの奴だったのに…誠実に対応してたな。「気持ちには答えられないが、好きになってくれてありがとう」って言って最後笑ったんだよ、あの人。それからその男は生徒会に入ってグラキアス様の補佐してたな。」 良く見てんな、誰も気付かなかった王子の本心に。 「…補佐?」 もしかして、以前俺を生徒会戻らないのかと聞いてきた奴か? 「あの人ってさぁ、他人の感情には疎いけど言葉にされたらちゃんと向き合う人なんだと思う。王子も言葉で伝えてたらあんた達の関係も変わってたと思うけどな。」 「………」 「それでも、俺は今のあんたのが分かりやすくていいよ。あからさまにイチャついてくれると、俺もしやすいしなっ。」 「婚約はしないのか?」 「んあ?してるよ、発表してないだけ。」 「…そうなのかよ。」 ガウディぺディオの言葉は驚くことばかりだな。 「当たり前だろ、ただの恋人ならあの人逃げちゃうから力ずくで婚約した。」 「意外だな。」 「あんたも欲しいって思ったから、部屋に連れ込んで離さなかったんだろ?」 「……だな。」 その通りです。 意外にも気が合うと言うか…こいつには敵わないかもと感じた。 ガウディぺディオは教師の元へ行き腰に手を回していた。 ガウディぺディオもガッチリとした体型だが、教師のが十センチは身長が高く体も鍛え上げられていた。 どちらが~など考えるのは無粋だが、ガウディぺディオの手が教師の尻の奥にまで指があるのを見るとそうなのだろう。 二人の後ろをエストレヤと歩いていた。 「俺達もあんな風に幸せでいたいな。」 「…ぅん」 小さな声で頷くエストレヤの顎を取り唇を重ねた。 俺達の後ろを歩くティエンダとフロイントは無言だが確りと手を繋いでいた。 一番後ろを歩くコンパーニョと婚約者のヴリーント。 二人は仲はいいが身体的接触はなかった。 手を繋いだことも…。 コンパーニョ視点。 「…俺達がおかしいのか?」 「…わかんない。」 コンパーニョが尋ねるもヴリーントも正しい婚約者と言うものが分からなくなっていた。 婚約者として仲はいい方だと思っていたが、ここに来て不安になり出した。 グラキアス様とイグニス様は他人など気にせず振る舞い、それを見習うかのようにティエンダとフロイント様も変わり出した。 そして、今日突然のガウディぺディオと先生の恋人宣言。 頭は追い付かないし、皆それぞれ密着しながら歩いていた。 変に距離があるのは俺達だけだった。 清い、健全な距離たが途端に遠いと感じ出した。 今まで触れたこともないのに、手を繋いだり腰に手を回すことは出来なかったので歩きながら少しずつ相手に近付いた。 相手の温もりを感じながら歩いているとあっという間に店についてしまった。 俺達の初めての店は誰も客がいなかった。 初日であり、注文の仕方も初めての事ばかりで客が興味はあっても遠巻き状態だった。 「全員バラバラに座ろうぜ、客のフリ。」 そう言ってグラキアス様が一番に入って行き、注文し外のテラス席にイグニス様と座った。 通りかかる人が二人を眺めている。 紙に包まれたパンを器用に手が汚れないように掴み、そのままかぶり付いた。 グラキアスの貴族とは思えない食べ方に人々は夢中になり目が離せなかった。 人の食べる姿を見てエロいと思ったのは初めての事だった。 一生懸命食べるイグニスの口許に近づき、口の端についていたソースを嘗めとった。 グラキアス様の大胆な行動にイグニス様は顔を真っ赤にさせている。 二人は食べ続けジャガイモを揚げたものをグラキアス様がイグニス様の口許に差し出すと、小さな口で食べていた。 二人の光景を見ていた恋人達が吸い込まれるように店に入ってくる。 俺達が注文し席につき食べ始める頃には満席となっていた。 各々婚約者と食べさせ有ったりとしている中、俺達はまだその領域には行けずたまに見つめあい静かに食べていた。 この場にいた周囲の恋人たちも触発され食べさせ合っていた。 俺達は周りを見ることも出来なくなり必死に食べ進めた。 これが婚約者なのか…。

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