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第10話

 同じように取調べを行ったが、他の三人の話も似たり寄ったりだった。  堀皮が他の質問とは違う反応を見せた、と思ったきっかけ及び彼らの共通の話題について質問したときもまた然り。驚いたり怒ったような口調になったり多少の違いはあったが、堀皮と同じように、それまでの質問とは異なる反応だった。  つまり、聞かれると思っていた質問と、聞かれるとは思っていなかった質問があり、それが共通していたということだ。  いくらオンライン上で知り合いだったとはいえ、たまたま集まった人間と、なんとなく思い立ってやった暴行事件で、あれだけ口裏を揃えられるとは思えない。  逆に計画的な犯行だったとしたら、四人の繋がりについて言及されることくらいは想定していてもいいはずだ。  どこかに手口を教え、犯行を促している者がいるとみて間違いない。  問題はそれが何か、だ。  闇バイトであれば、彼らが指示役を庇う必要は皆無だろう。  また、何か、は個人ではない可能性もある。インターネット上の悪意ある情報を間に受けて、そういうことをしてしまう。それが若者の間で一時流行する。そういうことは、十分にあり得る。  しかしその場合、全国で発生していてもいいはずだ。事件は、ほぼ管轄内で起こっている。  カリスマだか恐怖だかで未成年を扇動し、後ろ暗いところのある人物を襲わせている何者かがこの辺りにいる、というのが、現状最も自然な見立てだ。  そういった兆候について、この辺りの少年たちに伝説などと言われている(かどうかは知らないが)アキラに、もう少し詳しい話を聞いておくべきだっただろうか。 「……………………」  ごく自然にあの綺麗な顔を思い浮かべて、赤穂は慌ててそれを打ち消した。  何を、あの男を頼りにしようとしているのか。  そもそも、彼が今回の件に無関係とは断定できないのだ。  直接関係がなくても、関係者と知り合いなどだった場合、警察と仲間のどちらに味方をするかといえば、当然後者だろう。  下手に接触して逆に情報を流すようなことになってもまずい。 「赤穂。……何か、難しい事件か?」  横から声をかけられて、パソコンの画面からはっと顔を上げた。  少々困ったような表情の梅ヶ枝がこちらを見下ろしている。 「いえ、少し考え事をしていただけで」 「明王像みたいな顔で固まってるから、討ち入りでも決意してるのかと思ったよ」  ちらりと周囲を窺うと、不安そうにこちらを見ていた数人の係員がさっと顔をそむけた。  考え事をしていただけで、不機嫌だと勘違いされる。面倒だが、生まれつきの顔面はどうしようもない。  少し切ない気持ちになりつつ、咳払いで誤魔化した。 「ええと……、それで、何か?」 「ああ、ガキどものリンチ事件のことだが、今大丈夫か」 「ちょうど、私の方も相談しようと思っていたところです」 「そうか、加賀さんにも聞いてもらいたかったが……」  暴対係の机の方を見たが、加賀の姿はない。  ひとまず二人で情報共有することにした。 「昨夜、堀皮ってのを捕まえたらしいな」 「ええ、今朝、私が取調べを行いましたが……」 「うちが最初に担当した事件の被疑者共通の知り合いが、そいつだってのがわかった」  生活安全係の捜査員は、彼らの通う高校の周辺で聞き込みを行い、少年たちに共通の知り合いがいないか確認した。  そこで名前が挙がったのが、堀皮だという。教えてくれたのは、塾で堀皮と知り合いだったという男子生徒だった。  犯行を行ったの少年たちと行動しているのを繁華街で見かけたという。  これで、彼らが知り合ってから犯行までの間に、どこかに集まったりしている可能性が出てきた。  赤穂も、少年たちの家族へ聞き込みを行っていた初音からの報告について共有する。  こちらは、彼らがあまり外出せずにスマホやパソコンを見ている時間が長いことと、外出先についてはよく知らないということくらいしか出てこなかった。  荒れた様子の家はなく、「これまでに問題行動など起こしたことはなかったのに、どうして」……そんな風に話す母親が多かったという。 「昨晩の件の取調べで、ちょっと考えたことがあるんですが……」  赤穂は、先ほどまで考えていたことについて話した。  彼らを結びつけるものは、闇バイトだとか不良グループのリーダーではなく、アイドルだとか、インフルエンサーだとか、発信力のある何者かである可能性が高いのではないか。  梅ヶ枝も頷く。 「コンカフェ嬢や地下アイドルなら、近隣のごく限られた人しか知らないのはありうる。会員限定の配信なんてのもありそうな話だ。ただ、個人のアクセス履歴なんかを洗うのは、上からの指示がないと難しいな……」  これ以上は、本格的な捜査になるということだ。  加賀の捜査の結果とも擦り合わせて、それから課長に報告に行こうということでその場は終わった。

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