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第8話
グリシャの腕の中でひとしきり泣いた後、俺の目はパンパンに腫れてしまった。このまま村に戻って誰かに見られたら俺の泣いていたことはバレてしまう。だから、俺達は川に向かい、その水で目を冷やすことにした。
「もう、会えないと思っていた。あの時は、すまない。お前を危険に晒してしまった。」
長年の後悔をグリシャに謝罪する。グリシャは、俺の目に濡れたハンカチを当てながら、優しい声色で返す。
「俺はロキに会えて嬉しい。あの時も、ロキは俺のことを助けようとしてくれたでしょ。それに俺は何度もロキに救われた。だから、俺は怒ってなんかないよ。」
グリシャの言葉に余計に罪悪感が募る。父の厳しい指導に子供の俺が耐えられたのはターシャとグリシャのお陰だった。救われていたのは、俺のほうだ。
「許してくれて、ありがとう。俺もアレンに会えて嬉しい。ところでなんでアレンって名乗っていたんだ?」
名前が一緒なら俺はアレンだと気づいていた筈だ。不思議に、思って聞くと 、アレンは数秒考えて答えてくれた。
「俺達は、王国の人間から逃げていたんだ。だから、見つからないように嘘の名前を名のっていたんだ。ずっと、親友の君を騙していて心苦しかった。すまない。」
そうだったのか。俺は、親友の名前すらも知らなかったのか。そのことにショックを受けたが、本当のことをグリシャが話てくれて嬉しかった。
その後、俺達は夜明けまで昔、2人で作った罠で兎をたくさん捕まえたこと、父に悪戯して2人して怒られたことなど、色々な思い出話をした。まるで子供の頃に戻ったみたいだ。父の死によって絶望感に沈んでいた心がグリシャのお陰で少しだけ、明るくなった。
2人して怪しまれないようにコソコソとそれぞれの居場所に戻った。親友との再会を素直に喜びたいが、俺は村長、グリシャは王国の使者という深い溝が2人の間に横たわっていた。
「ロキさん、おはようございます。」
グリシャは仮面をつけ、あの変に丁寧な挨拶をしてきた。そのことが、グリシャは王国の使者であることを突き付けてきて、胸が痛む。ただ、俺は村長だ。辛い姿を誰にも見せる訳には、いくまい。 俺はグリシャを警戒しいる風を装って、挨拶を返す。
「おはようございます。グリシャさん。」
俺の挨拶を聞くと間髪いれず、グリシャが話し出す。
「私達は、あと2日でここを出ることにします。今まで、お世話になりました。」
王国の使者達は後2日でここたつ。待ちに待ったことなのに、グリシャとまた会えなくなってしまうのが辛い。最後の2日間は、時間が許す限りグリシャと過ごしたい。そんな思いを悟られぬよう、俺は機械的に返す。
「そうなのですか。王国にどうぞよろしくお願いします。」
そう言い、仕事が忙しいとグリシャのもとから離れる。嘘をつくのが苦手な俺はこれ以上、グリシャといるとボロがでてしまいそうだからだ。
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