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第10話

「グリシャさん、今日の夜、2人きりで呑みませんか。あなたと最後にお話ししたい。」 俺は仮面をつけたグリシャを誘う。もうフリなんかしなくても、グリシャを警戒している雰囲気は出ているだろう。グリシャは俺に飄々と答える。 「これは、なんて素晴らしいお誘い!是非、伺います。」 昨日とは別の意味でグリシャの側にいられなくなった。 「失礼します。グリシャです。」 俺の部屋にきたグリシャは仮面をしていなかった。それだけ俺を信頼しているグリシャを、俺は今、疑っている。意を決して口を開く。 「グリシャ、お前なのか、父を殺したのは?」 俺の発言に重苦しい沈黙が流れた。それを破ったのは、グリシャだ。 「あーあ、バレちゃった。やっぱり、テオは殺すべきだったな。」 そこには、仮面を被った飄々としたグリシャでも、あの晩、俺を慰めてくれて子供の時みたいに語り合った優しいグリシャもいなかった。酷く冷たい目をした知らない奴がいた。グリシャの豹変ぶりに俺は固まりつつも、後ろに隠しておいた短剣をバレないように握る。 「どうして、父を殺したんだ?父はお前たち、2人の親子を受け入れて助け、母を失ったお前を家族として住まわせていただろ?」 俺の発言を聞き、グリシャは高笑いする。グリシャの行動が訳がわからず、俺は恐怖を覚えた。 「なんでかって?お前の尊敬する父は俺の母を慰みものにしてたからだよ!俺達の家が村人達から離れたとこにあったのは母の叫聲が聞こえないようにするためだよ。」 嘘だ。そんなことを、あの厳しくも聡明な父がする筈がない。グリシャはおかしくなってしまったんだ。俺が目を見開き黙っているとさらに、グリシャは続ける。 「あとさ、俺の母を殺したのは熊なんかじゃないよ?お前の母親だよ。自分の夫が他の女にお熱なのに嫉妬して俺の母を滅多刺しにしたのさ。それを知ったお前の父は、熊に殺されたことにして隠したんだよ。」 母がグリシャの母を殺した?グリシャの口から聞かされる俺の両親は俺の全く知らない人たちだ。あの2人がそんなことする訳がない。そう思うのに、俺は何も言えず、ハクハクと口から空気を漏らすだけだった。 「嘘だ、、、。あの2人がそんなことする筈ない。」 やっとの思いで俺は口を開く。本当は声を大にして言いたかったのに、掠れて消えそうな声だった。 「信じられないなら、ここにお前の母親、連れてこれば?狂ったみたいに俺を殺しにくるだろうな。だって、俺は母さんそっくりだから。」 グリシャは楽しそうに続ける。でもその目は全く笑っていない。こいつは、危険だ。今ここで、やらなければ、村が危ない。俺は直感して、短剣を握りロキに振りかざす。しかし、グリシャは俺の攻撃するりとかわし、俺に足を引っ掛け転ばせる。さすが、村の子供のなかで俺に次いで強かった者だ。そんな者に、動揺して呼吸の乱れた俺の攻撃なんて当たる訳がない。俺が起きあがろうとする間もなく、グリシャは俺に覆い被さった。 「親の失態はさ、子供が償うべきだと思うんだよね?だからさ、ロキ、償ってよ。」 耳元でそういうとグリシャは俺にハンカチを当ててきた。その嫌に強い香りを吸い込むと、頭がクラクラしてボーッとしてきた。それに体が熱をもっていく。

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