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第15話

俺と母の家は、隠しごとをするみたいに村人達の住むとことは、離れた暗い森の近くに建てられた。王宮の部屋のが大きくて立派だったけど、ここよりもずっと寒く感じられた。母と2人だけの温かな空間は、俺を幸せにしてくれた。 「グリシャ、眠る前にはお香を炊きましょうね。」 そういって母はいつも香りの強い、香をたいた。その匂いを俺は苦手だったけど、母は頑なに炊くのをやめないため、俺は我慢することにした。その香を嗅ぐと、俺はいつもぐっすり眠ってしまうのだ。ある日の晩、ロキの啜り泣く声で目が覚めた。聞くと、母がロキを慰めている。 「大丈夫よ。ロキみたいに、頑張り屋で優しいいい子、ロキのお父さんが捨てる訳ないわ。ロキのお父さんは、ロキに立派な跡取りになって欲しくて厳しくしてるの。きっと今頃、心配になって探してるわ。」 「本当?」 「ええ、子供を捨てる親なんている筈ないもの。」 いつも俺を導く強くて優しいロキはそこにはいなくて、ただの弱い子供がいた。他の奴になら、母に抱きしめられることを許さないが、親友のロキには許してやった。俺にそんな姿を知られたくないだろうから、狸寝入りをしてやる。ロキが泣き止んで、母が手当てをしてやっていると、 「ロキ、ここにいたのか。」 汗だくのロキの父親が入ってきて、ロキを連れて帰った。その息遣いはどこか獣じみていて、恐ろしかった。その晩、母は俺を抱きしめてくれて、金木犀の香りが広がった。ただ、母の肩は小刻みに震えていた。 最近、香の香りを嗅いでも寝付けない。それでも、眠ろうと布団に潜り込んでいると、ガラガラと音がして、外の冷たい空気が入ってきた。こんな夜中に誰だろうか。また、ロキが母に泣きつきに来たのかと、思い今度はからかってやろうと身を起こそうとする。しかし、その荒い息遣いや大きな足音がそれがロキではない、大人であることを示す。俺は、本能的に今、起きていいることがバレてはいけないと悟り。呼吸を殺す。 「アレンは寝るから、大丈夫。速くしてちょうだい。」 聞いたこともない冷たい母の声。そして荒々しい息遣いの男は母に覆い被さる。母が襲われる。しかし、そんな状況なのに、俺の体は動かない。 「あ、うふ!ああ!」 隣では粘っこい水の音と、母の泣き叫ぶみたな声が響く。 「俺の慈悲でおいてやっているだぞ!なんだその態度は!!」 荒い息遣いの男は母を怒鳴りつける。その度に部屋に響く水音は増していく。誰が母にこんなことを。俺は勇気をだして、覗き見るとそこには、ロキの父がいた。熊みたいな大男が母の白くて細い体を押さえ付けて無理矢理、犯している。母は、俺たちを匿ってもらう代わりに、体を差し出していたのだ。全く香で寝付けなくなった俺は、毎晩、村中の男に母が抱かれる音を聞いていた。香は母が子に知られまいと炊いていたものだった。このままで香の香りがすると、母は男達を招き入れる。俺の幸せの象徴だったこの小屋は、香の香りと獣臭い男の匂いに満ちた母を傷つける場所へと変わった。 夜が明けるのを祈るみたいに待つ。はやく、終われ、はやく。空が白んできた頃、俺は小屋から逃げるようにして飛び出して、ロキといつも鍛錬している場所に向かう。あの匂いにこれ以上、耐えられない。 「おはよう、アレン。」 まだ眠そうなロキが瞼を擦りながら、やってくる。俺が無理をいって走り込みの時間を速くしてもらったからだ。 「おはよう、ロキ。さ、行こう。」 俺とロキは森を走る。朝方の森のひんやりした空気と、青臭い匂いが、あの嫌にじっとりと熱くて臭い小屋を忘れさせてくれる。その後は、剣の手合わせをする。寝不足の俺は、動きが悪くすぐにロキに負けてしまう。ロキは心配そうに、俺をみるる。 「どうしたんだよ、体調悪いのか。」 なんて、無邪気に聞いてくる。ただ純枠に俺を心配する瞳。こいつにお前の父が俺の母を犯してるのが五月蝿くて眠れないなんて言ったら、どんな顔をするだろうか。きっと絶望するに違いない。尊敬する父の欲に溺れて俺の母を傷つける獣みたいな本当の姿を知ったら、傷つくだろうな。その、綺麗なままでいてるロキを壊してやろうと、俺は口を開こうとした。でも、できなかった。村に馴染めず、王宮でも村でも母しか味方のいない俺を救ってくれたのは、ロキだ。ロキは俺の光だ。そんなロキを傷つけるなんてこと、俺にはできるわけがなかった。 「大丈夫、続けよう。」 なんともないことを見せるため、勢いよく立ち上がり、ロキに不意打ちを仕掛ける。

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