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第21話
門番を俺の美貌でたぶらかし、テントから抜け出る。あの獣の家臣らしく、鼻息を荒くして了承していた。そっくりな家臣と長だ。こいつは、色目を使われて、見逃したなんてプライドにかかわる事は誰にも言えないだろうと、少しの間の観察で俺は確信した。
ロキの父の部屋に幻覚を見せる花の香を焚いて忍び込む。俺は母の金木犀の香りを纏っている。ロキの父は、金木犀の香りを嗅ぎ、無意識に扉を開いた。
「ねぇ、来て。」
男の声でロキの父を誘う。でも、幻覚の見えている奴には、俺の姿は母に見えているだろう。
「ターシャ。私はお前を愛してたのだ。なのに、お前が受け入れてくないから。やっと私を受け入れてくらるのか。」
幻覚で頭がおかしくなった奴はおかしな事をいいながら俺に抱きついてくる。それを俺は、受け入れ、テオの父の口に口付けてやる。俺は舌の裏に隠していた、紙に包まれた毒物を奴の口に押し込んだ。その後は、毒が効いて奴が動けなくなるまで、好きにさせてやった。奴はあの荒々しい息を俺に吐きかけ、母の名前を呼びながら死んでいった。
あの男の葬式に俺はあの幻覚を見せる花をたむけてやった。母の幻影を見ながら死んでいった哀れな男にぴったりだ。そんな俺の気も知らず、ロキは俺の花を受け取る。泣かないと努めて、葬式を仕切る姿は痛々しい。村が悲しみの涙で暮れる中、俺は仮面の下でほくそ笑んでいた。気分がいいので、俺は奴らの祝いの日に歌う民謡を歌ってやった。一仕事、終えて油断していたのだ仮面を外して夜風を浴びていると、ロキがやってきた。ロキは、俺の顔をみてかたまる。俺を思い出してくたのか。こいつは俺の弱点だ。今ここで、壊してしまおう。ロキを壊す残酷な考えが俺の脳裏に浮かぶ。俺は思惑を悟られぬようにロキに近づき、抱きしめる。
「ロキ、泣いてもいいんだよ。お父さんが亡くなって辛かったね。誰にも言わないから。強がらないで。」
あの晩の母と、俺の姿がロキの中で重なり合う。俺は親友だったロキさえも、金木犀の香りで欺くのだ。抱きしめたロキのひどく冷たい体をしていた。
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