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第32話

グリシャから送られてきた辞書で王国の言葉を学ぶ。俺は王国に行ったとき、自身の言葉が通じない孤独を味わった。その経験から言葉の壁をなくすことが、王国との和解の助けになると思い、村長の仕事に加えて日々、勉強する。そんな俺を心配して、アリは俺の傍らにいてくれる。アリには、頭があがらない。いつものように、村長の仕事をしていると、ぐらりと視界が傾く。 「ロキ!よかった。目が覚めて。」 心配そうな顔のアリが俺を覗き込んだ。どうやら俺は倒れてしまったらしい。日々の過労の所為だろう。 「アリ、看病してくれてありがとう。俺はもう大丈夫だよ。」 アリに心配させまいと俺は笑顔を見せた。けれど、アリの表情は曇ったままだ。 「ロキ、頑張り過ぎよ。あなたが村を変えようとしてるのはわかるわ。でも、少し休んでもいいんじゃないかしら。」 確かに、俺は昼は村長の仕事、夜は言葉の勉強をしていて睡眠が足りていない。でも、俺はグリシャ達に俺達がした罪を繰り返さないため休んでいる暇はない。 「休ん でなんかいられないよ。王国と和解するためには、長い時間がかかる。だから、1日も無駄にできないんだ。」 ピシャリ。 アリの小さな手のひらが俺の頬を叩く。アリは涙目で訴える。 「あなたが倒れたら、誰が村を守るの!ロキはいつも鍛錬の後に寝ることは大切だと言っていたでしょ?」 アリの発言と頬の痺れにハッとする。俺はいつも村の子供に、鍛錬の後はしっかり休むように言っていたのに、自分はできていなかった。恥ずかしい話だ。それに村長としての仕事を満足にできないなんて本末転倒だ。 「アリ、すまない。」 「わかってくれたらいいの。」 アリを俺は抱きしめた。女性特有の柔らかさと匂いがする。 「ロキ、、、。」 アリも俺の肩に手を回そうとしたときに、俺はアリを押し返した。こんなに支えてくれるアリを抱きしめても、俺はあの晩の骨ばった手で俺を抱きしめたグリシャを思い出してしまったのだ。アリは悲しそうな目をしながら笑った。 「アリ、すまない。」 「ロキは今日は私に謝ってばかりね。本当はわかってたから大丈夫よ。」 そういうと、アリは小走りに部屋をでていった。アリの目は涙の膜が貼っていた。 次の日、アリにどう接すればいいか俺が測りかねていると、アリから挨拶をしてくれた。 「おはよう、ロキ!」 その声は明るく弾んで聞こえるが目元は赤い。アリは俺のために普段と変わらない態度をしてくれた。こんなに自分を思ってくれる人を俺は拒んだ。アリのような素晴らしい女性は俺なんかよりももっといい人がいるだろう。せめて彼女や村人のために立派な村長になろう。

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