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第33話
「助けてください!」
王国の言葉で助けを求めながら男が俺達の村にやってきた。
俺以外は言葉を理解できないため、皆は警戒している。
みると男はボロボロで顔色も悪い。
血の匂いもするあたり、ひどい怪我もしているみたいだ。
すぐに手当をしなければ。
俺は男に駆け寄り話しかける。
「すぐに安全な場所に連れて行きます。だから私に捕まってください。」
辞書で勉強していたため発音には自信がなく、伝わったか不安だ。
幸い男は意味がわかったみたいで俺につかまる。
傷に触らさないよう慎重に村の医者のところへと運ぶ。
医者のところに着くと、既に準備が整えらていた。
アリもいる。
彼女が医者のもとへ走って知らせてくれたのだろう。
「彼は医者です。傷をみせてください。」
俺がそういうと彼は着ていた上着を脱ぐ。
よく鍛えられた体に剣で斬られたような傷が刻まれている。
そこから赤黒い血がまだ滲み出ている。
こんな状況でも気を失わない男の精神力は凄まじい。
その酷い傷にアリは目を背ける。
狩などで血を見慣れている俺と医者で傷口を洗う。
そして医者は清潔な包帯を巻いてやった。
その間も男は声ひとつ上げもしなかった。
「今晩が峠でしょう。」
深刻な顔をして医者が告げる。
あそこまでの怪我をした男は酷い熱をだしていた。
苦しそうな呼吸音がずっと聞こえてくる。
医者、アリ、俺の3人で交代で看病をする。
彼の屈強な精神力と、人間の自然回復力が傷に打ち勝つことを願う。
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