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第39話

「おかえりなさい。」 村についた俺達をアリや村人が迎え入れ、手には応急処置用の用具を抱えている。 彼女にはこの計画は話していなかった筈だが女の勘というやつか。 道中何度か追っ手に追いつかれた俺達は怪我と疲労で気力で立っていた。 そんな俺達一人ひとりにアリは声をかけながら手当をする。 たぶん女神とはこういう女性をさすのだろう。 ただ彼女の優しさに触れても友を失った悲しみが俺達を包みこむ。 その場にはテオの両親もいて辺りを見回していた。 大切な息子の姿を必死に探す様子に、俺は側によって頭を下げる。 「すみません。」 俺が謝った瞬間に2人の顔が歪む。 そして俺の肩に掴みかかり揺さぶった。 爪がキリキリと肌に食い込む。 けどそんな痛みたいしたことはなかった。 2人の顔を見る方がよっぽど辛い。 「なんで、謝るんですか。息子は息子は無事なんですよね。」 「なんとか言ってくださいよ。」 絶叫にも聞こえる声が村に響く。 必死の形相で目は見開かれている。 「すみません。俺のせいでテオは死にました。これだけしか持って帰れませんでした。」 俺がそう言ってテオの髪を手渡すと、肩に込められていた力がぬける。 そして2人は泣き崩れた。 「どうして、テオだけ、、、。」 さっきまでの絶叫が啜り泣く音に変わった。 テオは俺のせいで死んだ。 何をしても償えないことはわかるけれど、頭を下げ続けた。 すると、後ろに気配を感じた。 「ロキではありません。私を庇ってあなた方の息子は死んだんです。私を責めてください。」 グリシャがそう言いながら俺の前に立つ。 そして深々と頭を下げると先程までの音が消えた。 「私の息子が死んでなぜお前が生きているんだ。償え!」 そう言って彼女はグリシャ飛びかかる。 動きは遅くグリシャなら避けられるのに彼はそれを受け入れた。 白い首にしわがれた手がかかる。 手が筋張っていいて凄まじい力が込められていた。 それなのにグリシャは一言も発さず、ただ老女を見つめる。 このままでは死んでしまうと俺が老女を払いのける。 テオが命をかけて守ったグリシャがテオの母親によって殺されるなんて耐えられない。 他の仲間がテオの母親を押さえつける。 怪我をしていても若い男の体には敵わなくその場に動けなくなる。 それでも母親は叫び続けた。 「この人殺し!お前を殺してやる!」 温厚だったテオの母親の顔は怒りや悲しみで歪み鬼のような形相だ。 けど、ここにいる誰も彼女を攻めることなんてできない。 村には彼女の泣き叫ぶ声が木霊し続けた。

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