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2話 休日の2人

 俺の家に遊びに来て、今にも眠ってしまいそうな尚稀におむつを着ける。夜は交換のしやすいテープタイプだ。  一緒に眠ってくれるようになってから、夜中に何度かおむつを確認すると、大抵二回漏らしてしまう事が分かり、朝までそのおむつを穿かせ続けるのは可哀想なので、自然と夜中に交換するようになった。その時にズボンを全部脱がせなくてもいいテープタイプにする事を俺が提案した。最初は脚を大きく広げるポーズを恥ずかしがっていたが、今はだいぶ慣れたらしい。  そして最近気付いたのだが、おむつを着けてあげている時、親指をしゃぶる様な仕草をする時がある。目が覚めている時は、爪を噛んでいるくらいにしか思っていなかった。だが、今のようにとろんとしている時や、眠ってしまってからは、完全に指をしゃぶっている。タバコをやめたから口寂しいのか、甘えたい気持ちの表れなのか。  尚稀が泊まった翌日、二人で朝食の準備をする。俺はコーヒーを淹れて、尚稀は目玉焼きを作っている。それだけでも幸せなのに、尚稀はTシャツにおむつ姿なのだ。何故ズボンを穿かないのか聞いた事があるが、おむつを交換する時どうせ脱ぐのだから、最初からおむつ一枚の方が楽らしい。その理屈はよく分からなかったが、一緒にいるのが恋人だと自覚して欲しい。生足だけだってそそるのに、その上おむつ姿。元々変わった趣味は無かったはずだが、尚稀のおむつは可愛く見えて仕方がない。  便所が近いというのも本当だったらしく、俺の家で映画を見ていた時、トイレまで間に合わず漏らしてしまった。それ以来、少しずつ日中でもおむつをする事が増え、最近ではもうずっとおむつで過ごしている。ここだけの話、学校にもおむつをして行ってる程だ。  それに、尚稀も俺におむつを替えてもらう事に快感を覚えてる気がする。おむつをしていても、我慢できるなら便所に行くように言ってるが、俺の家にいる時は我慢してる様子は無いし、学校でもしょっちゅうおむつ替えを頼まれる。  おむつ替えはいくらだってしてやるが、おむつをしている事で精神的に退行しつつあるのか、これが尚稀の素なのか、最近の悩みでもある。そのどちらでも、尚稀を愛している事に変わりは無いし、これからどんな事があったとしても、愛しい気持ちは揺るがないだろう。  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  休日、いつもの様に尚稀は俺のベッドで寝ている。指しゃぶりをしながら、おむつのみ着けた姿で。   昨夜セックスしたままだから、上は着せていない。最近は朝でも蒸し暑いのでタオルケットをかけてやれば風邪をひくことはないだろう。  尚稀が寝ているうちに、簡単な朝食の用意と、洗濯等を済ませる。少し前までは尚稀も家事を手伝ってくれていたが、だいぶ甘えたになったので、俺に全てやらせたいようだ。俺はそれが可愛くて、尚稀に頼む事は無くなった。元々一人暮らしが長いので、家事は一通りできるし苦でもない。  洗濯も終わり、する事が無くなったので、そろそろ尚稀を起こす。 「尚稀、朝だよ」  耳元で優しく囁くと、むずがるような仕草をする。 「ん~」 「今朝はサンドイッチにしたよ。何飲みたい?」  指しゃぶりをしながら、うっすら瞼をあける。 「もう指ふやけてるんじゃない? 赤ちゃん尚稀にはこっちの方がいいかな?」  尚稀の指を口から外し、隠し持っていたおしゃぶりを咥えさせる。 「っ!」  するとすっかり覚醒した様子で、俺の腰に抱きつく形で顔を隠してしまった。 「何、恥ずかしいの?」  もぞりと頷いた気配がした。だが、すぐ外さない時点で気に入ったと言ってるようなものだ。 「今度哺乳瓶も買おうか? 尚稀には似合うと思うけどな」 「ん~っ!!」  おしゃぶりを咥えたまま抗議の声を出す姿にはつい笑ってしまった。そのうちこっそり哺乳瓶も買っておこう。  朝食を終えて、尚稀はおしゃぶりを咥えながらソファでテレビを見ていた。  朝あんなに恥ずかしいと態度で示していたのに、朝食が終わったら俺におしゃぶりを催促してきた。もちろん口で言う事はしない。目でチラチラと俺を見て、俺に言わせようとするのだ。どんどん赤ちゃん返りしていく尚稀が可愛くて、いくらでも甘やかしてしまう。おしゃぶりもやり過ぎたかと思ったが、気に入ってくれてなによりだ。  しばらくじっとしていた尚稀だが、いきなり慌てた様子でソファから立ち上がろうとした。しかしその瞬間に足を滑らせて転んでしまった。ソファは低めだし、ケガをする程ではないと思うが、急いで尚稀の様子を確認する。 「どうした、大丈夫か?」  転んだままの体勢で身体を固くしていて、何となく察しがつく。程なくして、おむつの中からガス混じりの鈍い音がし始めた。尚稀を中心に、独特のにおいもする。 「ぅう~っ!」  下を向いたまま、ポロポロと泣き出してしまう。尚稀は毎日おむつをしてるとはいえ、これまで大便は便所で済ませていた。だが、転んだ事で我慢が効かなくなってしまったんだろう。 「大丈夫だから、全部出しちゃおうな。ほら、俺に掴まって」  尚稀の体勢があまりに苦しそうだったので、起こしてやり、俺の肩に掴まらせてその背中を撫でる。するといきみ始めたので、このままおむつに排泄するつもりなのだろう。  しばらく様子を見守っていたが、数分経った頃には身体の力が抜けて座り込みそうになったので、両脇を持って立ち上がらせる。 「終わった?」  黙ったまま小さく頷く。 「腹下してるのか?」  それには首を振ったので、とりあえず便所に連れて行く。廊下を歩いてる時も俯き、涙を拭っている。 「今回のは事故だったんだから、あんま気にするなよ」  頭を撫でてやるが、泣き止む気配は無い。  便所に着くと尚稀を便器に座らせ、おむつのサイドを破る。中を見ると、硬い便がかなりの量出たようだった。 「これならシャワーじゃなくてもよさそうだな。ほら脚閉じて」  そのままウォシュレットのボタンを操作する。 「ちょっとだけ我慢な。後拭いてやるから」  常備してるおしりふきできれいに拭いてやると、少しだけ泣きやんだ。 「⋯⋯嫌じゃない?」  それは本当に小さくて、聞き逃してしまいそうな声だった。尚稀は本気で嫌われたんじゃないかと心配していたんだ。俺にしたら、あれだけ毎日小便の世話をしてるんだから、大便に変わっても何の問題も無いんだけどな。 「俺が尚稀の事、このくらいの事で嫌いになると思う? おしっこもうんちも、いくらだって世話してやるし、赤ちゃんみたいな尚稀の事だって、可愛くて仕方ないんだよ」  ぎゅーっと抱き締めて、本音を伝える。不安になりやすい恋人には、いったいどれくらい伝わるだろうか。少しして、尚稀も弱々しく背中に腕を回してくる。 「休日なんだし、リビングでゆっくりしよう」  俺が言うと、僅かに頷いた。  身体を離すと、やっと泣きやんだ尚稀にじっと見詰められる。これは何の要求だろう。 「尚稀、どうして欲しい? 何でもしてやるから」  そう言うと、またか細い声が聞こえた。 「⋯⋯だっこ」  リビングまでだっこで移動させて欲しいらしい。言葉で求めてくれるのは貴重なので、その姿が大変可愛らしかった。 「いいよ、だっこしよう」  程よく筋肉の付いた身体といえど、十センチ以上も身長差があれば、簡単に抱き上げることができてしまう。  恥ずかしいのだろう、いつもより熱い体温を腕に感じながら、幸せな気持ちでリビングに向かった。

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