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第20話 頭を冷やしなさい!
「一体、どこまで知っている?」
無防備に揺れる瞳。今すぐ隠して自分のものにしたいと、喉から手が出そうなほど欲しい。
俺は先生の手に触れたまま席を立ち、より距離を詰めようと試みる。
すると、先生も席を立ち、両手で俺の肩に触れる。上目遣いの愛らしい瞳に俺が映り込む。
「……頭を冷やしてきなさい」
それは地獄の底から絞り出されたかのようだった。
「え?」
「頭を冷やしなさいと言っている!!」
両肩を掴まれたまま廊下に放り出される。
「え、先生?」
「私がいいと言ったら、入ってきなさい」
叩きつけられるようにドアが閉められる。その衝撃の音で熱に浮かされていた意識が強制的に引き戻された。
静まり返った夕暮れの廊下。自分の少し荒くなった呼吸の音しか聞こえない。
え、俺は一体何を……?
先生の手に触れ、指を絡めた。しかも、あんな挑発的な言葉を投げかけた。
心臓が馬鹿みたいに震えている。
「……っ!もう意味分かんねーよ」
先生がいる教室のドアに背をもたれかけ、廊下に座り込む。
手には先生の甲の感覚。触れる時間が長くなればなるほど、熱くなる手の感触、温度が残っていた。
先生の秘密に迫りたくて。誰にも知られていない部分に触れたくて。追い詰めたいと思った。でも、逆だ。追い詰められていたのは俺の方だ。
あの不器用な手当。俺のためだけにぎっしりと書かれた解説。そして、あの黒いノート。
先生の誠実さに触れるたびに毒のように、自分でも理解できない感情がかけめぐった。
あんなに嫌っていたのに、自分から触れにいくようになった。
「『攻略』されてるのも、追い詰められているのも、俺の方じゃん」
体育座りをした膝に顔を埋める。
秘密なんて知らなければよかった。あんな顔知らなければよかった。
先生に『攻略』されていく自分がこれからどうなるか分からない。それが怖かった。
先生に他の生徒よりも特別に想われている。それを嬉しいと思う自分が怖かった。
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