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第21話 夏休みの部活スタート

 ボールがリングに嫌われているみたいだった。何本打っても、いつもの爽快な音がしない。打てば打つほど、リングとは逸れた方向にボールは軌道を描くのだった。 「侑李、最近調子悪くない?」  ドリブルをしながら近づいてきた拓海の手から、ボールが離れる。すると、まるで磁石のようにリングに吸い込まれていった。  俺もフォームを整え、シュートを放つ。やはり、それが決まることはなかった。  季節は夏。他校よりも早めに期末テストが終わった俺の学校では既に夏休みに入っていた。  体育館の大型扇風機が唸りを上げながら、首を回す。しかし、かき回されるのは熱風だけで肌に張り付くユニフォームは汗で重い。  俺は裾を掴み、首にびっしりとかいている汗を拭う。  隣のコートでは先輩達が実践練習を行っており、バッシュの鋭い音が体育館中に響いた。 「制限時間あと三分だ」  その中でもやけに明瞭で響く先生の声。首にはストップウォッチがかかっており、この暑さの中でも先生だけは涼し気だった。  先生が臨時顧問になってもう二か月も経った。  初めは怖がっていた部員も毎日過ごしていれば慣れるわけで、本来の和やかな雰囲気を取り戻しつつあった。  ゲームの終了を告げる電子ホイッスルの音が響く。 「休憩しなさい」  先生の掛け声で先輩たちはベンチに移動する。俺と拓海もそれを合図に一旦、休憩に入った。 「暑い、暑すぎる」  扇風機の前に陣取った拓海が「あー」と喉を震わせ、宇宙人のような声を出している。 「わ、れ、わ、れ、は、う、ち、ゅ、う、じ、ん、だ。侑李もやろうよ」  既にこんなに暑いのに腕に引っ付いてきた、拓海を無理やりはがす。 「やらない」 「えー。楽しいのに」  断ったのにもかかわらず、遊び続ける拓海の変な声が体育館中に響き渡る。 「楽しそうでよかったな」  俺は関係ありません、と扇風機に背を向ける。目が勝手に隣のコートを追った。  いつもなら一瞬で目に入るのに、俺が視線を向ける先に先生はいない。背の高い先輩たちに囲まれ、しばらく見つけられなかった。

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