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第28話 嫌いじゃないんですか

「先生」  これ以上離れないように、急いで先生の手首を掴む。  俺にはまだ確認しないといけないことがある。  先生は俺の掴んだ手をじっと見つめる。  俺は反射的にその手を離した。 「……先生って俺のこと嫌いじゃないんですか」  聞いてしまった。  心臓の音がこの教室に響き渡っているようだ。先生には聞こえていませんようにと何度も頭の中で唱える。 「は?」  驚いているのか、気味悪がっているのか、眉間にしわを寄せる先生は頭を傾げた。 「どうしてそうなる」 「だって、俺、迷惑ばっかかけてるし」  たどたどしい言葉をなんとか紡ぐ。  先生は大きなため息をついた。 「それと嫌いは別だ」  先生は俺との距離を一歩縮める。 「私は、お前を嫌ったことは一度もない」  聞き間違いじゃない。聞き間違いじゃないよな?  目から生ぬるい液体が線を描く。 「あれ、あれ?」  何度拭っても今回は止まることがなかった。  こんなに気持ちがいっぱいになると思わなかったのに。  こんな姿、見せたくなかったのに。  ごちゃまぜになった感情が俺の中で渦巻く。  先生は少し困ったように片方の口角を上げた。 「初めて泣いているのを見た」  ほんのわずかに、声が和らぐ。  涙でぼやけ、先生の姿をはっきりと認識することが出来ない。  でも、俺が泣き止むまで先生は傍に居てくれた。その温かさで見守ってくれていた。

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