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第34話 覚えているか?
「矢島。どうした?」
床に座り込み、段ボールの山を一つずつ確認する先生の隣に俺も座る。
「教頭先生に手伝いに行くように言われて」
「……そうか」
先生は段ボールの中をのぞきながら、短く答える。
その声はいつもと同じはずなのに、落ち着きがないような気がした。
俺は自分の近くに積み上がる段ボールを先生と同じように確認していく。
しばらく二人の段ボールを探る音が響いた。
ふと先生の手が止まる。
「去年」
「え?」
「去年の玉入れを覚えているか?」
先生がなぜこんなことを聞くのか分からなかった。
毎年、玉入れは高校一年生が参加する競技だ。俺も去年参加し、熾烈な争いとなったのを覚えている。
「はい」
俺が返事をすると、先生は再び手を動かしながら、何かを思い出したのか、ふっと息を漏らした。
「矢島はあの時も最後まで諦めなかった」
「え?」
「笛がなる直前まで投げていた」
先生の手が忙しなく動く。
その言葉は、まるで俺をずっと見ていたかのように細かかった。
「最後外れた玉を拾い上げて投げ直していたな」
俺は思わず、先生の横顔を見た。
「よく覚えていますね」
「覚えている。忘れない」
先生は何でもないことのように言う。
他の生徒に関しても同じなのだろうか?
心臓がドクドクと脈打つ。
「お前は諦めない。最後まで」
確信めいたような口調が俺の胸を妙にざわつかせた。
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