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第40話 先生のことが好きです
先生の手が一瞬、ドアノブの上でためらいを見せたかと思えば、そのままかけられる。
生徒指導室に入ると先生は椅子には座らなかった。
机の横に立ったまま、俺をじっと見ている。
早く終わらしたい。この場にいたくない。
そんな雰囲気が感じ取れた。
俺は空気を肺いっぱいに吸い込み、両手をぐっと握りしめた。
「俺、体育祭の時、変なこと言いました。先生が俺のこと好きなんじゃないかと思って」
俺だけの声が響き渡る。
震える右手を左手で押さえた。
「先生、あれから俺のこと避けてますよね」
先生の目が痛みをこらえるように細くなる。
「俺それが凄く嫌でした。前は目を合わせてくれたし、くだらない話とか約束にも付き合ってくれて。今日だってテストに『よくやった』って書いてくれたじゃないですか?」
思い出した途端、息がこぼれた。
「先生にとっては、なんでもないことかもしれないけど、それだけで俺、凄く嬉しくて救われたような気になるんです」
先生は何も言わない。ただ、机の端に視線を落とした。
「でも、同時に思ったことがあります」
言葉が喉に引っかかる。
胸が痛いほど、脈打っていた。
「俺……こんなことになるなら、嫌われていた方がマシです。だって、諦められるから」
先生が顔を勢いよく上げる。久しぶりに視線が絡み合った。
「俺、先生のことが好きです。先生の特別になりたいです」
やっと伝えられた。
閉じた口は乾き、息が上がっているような感覚だった。
先生はすぐには答えない。ただ、俺を見たまま立ち尽くしている。そして、深く息を吐いた。
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